研究課題
排卵後のマウス未受精卵(MII期、供試数:約3万個)で発現しているタンパク質を二次元電気泳動によって分離し、得られた各スポットのタンパク質を質量分析によって同定した。同定したタンパク質は、公開データベース(GO、Pantherなど)に基づいてアノテーションを行い、タンパク質の機能別に分類した。次に、MII期で同定したタンパク質の経時的な発現変動を解析するために、MII期および受精後の発生各段階(1細胞期、初期2細胞期、後期2細胞期、4細胞期、8細胞期、桑実胚期、胚盤胞期)の細胞(供試数:約600個)よりタンパク質を抽出し、二次元電気泳動を行った。二次元電気泳動像(各区3枚以上)の画像解析により、各タンパク質スポットの発現量の定量解析を行い、発生段階間の発現量を比較し、初期胚発生過程におけるタンパク質発現プロファイルを得た。その結果、MII期卵に存在するタンパク質のうち、50種類以上を同定した。また、同定したタンパク質をタンパク質の機能別に分類した結果、MII期卵にはタンパク質代謝および修飾に関連するタンパク質が最も多く存在した。タンパク質の種類ならびにその発現量において、既に報告されている多分化能を持つES細胞のそれらと比較して明らかに違いが認められた。今後、同定精度を上げるとともに、初期胚発生過程におけるタンパク質発現変化を俯瞰的に把握するため、各発生段階において有意な発現変動が認められたタンパク質群に対して、多変量解析(階層クラスタリングおよび主成分分析)を実施する。また、同定されたタンパク質で、一部特異抗体を用いたWestern blot解析により、各タンパク質の発現と定量性が検証することができた。
2: おおむね順調に進展している
本研究計画に従って、平成23年度には「実験1:初期胚における差次的プロテオーム解析」及び「実験2:タンパク質の機能予測と発現の検証」を実施した。上記に示すように、差次的プロテオーム解析により発生過程の特徴を示すタンパク質が同定されおり、その機能予測と発現の検証も、順次進めていることができている。また、当該研究に関連した論文発表、学会発表及び特許出願が順調実施することができている。
実験1及び実験2は順調に進捗しているため、平成24年度も継続して実施する。また、実験計画にしたがって、「実験3:分化全能性の獲得・維持に関する分子ネットワークの基盤構築」のおいては、既に実験1及び2の結果から獲得したタンパク質情報から、公共データベースならびに酵母two-hybrid systemを用いた相互作用タンパク質の同定を進め、分化全能性の獲得・維持に関する分子ネットワークに関する基礎的知見を獲得する。
本研究計画の実験1~3のステップの最低限度経費として消耗品費(物品費)として主に使用する。また、積極的に実施する研究成果発表(学会参加費など)にも使用を予定している。
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Cell Reprogram
巻: 14 ページ: 20-28
IPSJ Transactions on Bioinformatics
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doi:10.1073/pnas.1013634108.