研究課題/領域番号 |
23658293
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
清水 弘樹 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 主任研究員 (30344716)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 糖鎖 / シクロデキストリン / 有機化学 / マイクロ波 |
研究概要 |
beta1-4Galの環状糖鎖化合物(Gal-CD)は理論的には存在可能で,分子モデリングに依れば分子表面の疎水性が強くなり,通常のシクロデキストリンと反対の性質を示すユニークなものになると予想されている。しかし実際には合成が非常に困難で,未だその合成は達成されていない。この合成に申請者の有するマイクロ波利用技術を駆使して挑戦し,合成後,基本的な化合物の性質を検証,さらにやはり申請者の有するCDの酵素反応への応用知見を基に、反応系への2次利用展開研究を計画した。 平成23年度は、beta1-4Galの環状糖鎖化合物(Gal-CD)の合成研究を進めた。 Galbeta1-4Galユニットの合成は非常に困難である。これは,ガラクトース合成シントンは椅子型を取らずに比較的船型になりやすいという構造的な問題のほか,単糖ユニットの反応性を妨げる様々な要因や制約が存在するからである。Galbeta1-4Galユニット合成では,ガラクトースの1位から6位までの5つのヒドロキシル基はすべてなんらかの形で関与するため,それらの保護基などは必然的に制約される。そこでまず、立体的また反応性への寄与などを考慮して、様々なガラクトース単糖シントンを調製した。 環化反応では、当初の計画に示した様に、糖ユニットをコア部と結合することで環化反応点どうしを近づけ,また分子内反応となることで反応性の向上が期待できる「コア化合物補助環化反応」を活用している。そのコア化合物として、ヒドロキシル基を5つ有するグルコースや、カリックスアレーンを活用した研究を現在進行中である。 現段階では未だ目的化合物の合成までは至っていないが、反応性が悪く合成困難なGalbeta1-4Galユニットの合成の目処が立つ程度まで研究は進んでおり、平成24年度に引き続き目的化合物の合成研究を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では平成23年度中にbeta1-4Galの環状糖鎖化合物(Gal-CD)合成を終わらせる予定であったが、現在のところ、そこまでは至っていない。しかし、合成困難なbetaGal1-4Gal結合をコア化合物利用した分子内反応法で達成しており、目的化合物合成の目処はついている。本研究が萌芽的な挑戦課題であることを考慮すると、決して悲観する状態ではないと考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に得られたガラクトースシントンと反応性、環化反応の初期知見を元に、目的化合物であるbeta1-4Galの環状糖鎖化合物(Gal-CD)の合成研究を進める。そしてその後、合成した環状オリゴ糖の物性、特性分析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は主に、環化反応を達成させるための試薬などの消耗品費と、多くの条件で環化反応を試行するための研究補助員を雇用費、またこれまでの論文に現れないネガティブな知見を有している外来研究者の招聘、最適反応条件知見を得るための旅費などに利用する予定である。
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