種々のジアルキルアミノケイ素化体に対して種々のフッ化物イオンを作用させてアミドアニオンの発生を検討した。その構造についての研究はこれまでほとんど行われていないので、この構造化学研究を各種スペクトルを用いて解析した。また反応開発においてもアミドアニオンの生成については各核種NMRスペクトルでモニターを試みるとともに、末端アルキンの脱プロトン化修飾反応を用いて生成するアミドアニオンの脱プロトン化剤としての評価を行った。当量反応で評価を行った後、活性化剤であるフッ化物の量を触媒量として脱プロトン化-修飾反応を検討しその触媒効率の向上をはかった。フェニルアセチレンの場合にはフッ化物の当量が1mol%でも反応が円滑に進行することを確認し、さらにこの触媒反応を芳香族化合物の環プロトンの脱プロトン化-修飾反応への適用を検討した。芳香環上の環プロトンのpKaの値からこのオニウムアミドを用いる脱プロトン化の適用は、アゾール類などの芳香複素環や電子求引性の置換基を有する芳香族化合物について幅広く可能であることを示した。さらに開発した反応の応用として不斉変換反応を試みた。キラルなオニウムアミドについては既知のキラルオニウム塩から容易に発生させることができると考えられる。丸岡らのビナフチル型キラルアンモニウム塩あるいはDollingにより開発されたシンコナアルカロイド誘導体型キラルアンモニウム塩から調製を検討した。またさらに独自にキラルなホスファゼニウム塩を設計、開発を試みた。このようなキラルなオニウムアミド試薬を用いて脱プロトン化-修飾の不斉触媒反応を行い、エナンチオ選択的な変換が可能と考えられるが現時点ではまだ不斉変換には成功していない。アミドアニオンで脱プロトン化を行うため、従来の有機触媒では困難と考えられた芳香環炭素上での直接的な不斉変換が可能と考えられさらに検討を続ける。
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