研究課題
DNAに対する化学反応は遺伝情報に異常(変異)を誘起することが知られており、がんをはじめとする様々な病気の原因になることがわかってきている。特にDNAに対する光電子移動反応は、生体内で頻繁に起こり、酸化損傷などの遺伝子変異を誘起すると考えられている。しかしこれらの反応の選択性を制御するのは非常に困難である。本申請研究では2本鎖DNA内で誘起される光電子移動の制御により、変異を選択的に誘起する新しい方法論の構築を目的とした。本反応の開発において、鍵となる反応は、①光反応による効率的なラジカルカチオンの発生及び②発生したラジカルカチオンに対して求核反応あるいは酸化反応を誘導する反応である。まず光増感剤としてアントラキノン、およびアルキル化反応を誘起できる前駆体として2-アミノー6-ビニルプリンを導入したオリゴヌクレオチドを合成した。さらに光増感剤を導入する前駆体として、D-スレイノ-ルリンカ-を導入したオリゴヌクレオチドも合成した。アントラキノンおよび2-アミノー6-ビニルプリンを導入したオリゴヌクレオチドを用いて標的DNAに対するアルキル化反応を検討した。その結果、2-アミノー6-ビニルプリンをアントラキノンの3’側に導入した配列では5’側に導入した配列よりも反応収率が高いことがわかった。また安定前駆体であるSMe体に光を照射して反応性を比較したところ、2-アミノー6-ビニルプリンをアントラキノンの3’側に3塩基離して導入した配列において、収率はそれほど高くないもののアルキル化反応の進行が確認された。これらの結果からアントラキンの導入位置が活性化及びアルキル化反応性に影響を与えることがわかった。今回の結果はアントラキノンからの光電子移動によりSMe体が酸化され活性化される可能性を示すものと考えている。
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