研究概要 |
本研究は、先に当研究室で見出した萌芽シーズ:azaadamantane型オキソアンモニウム塩のアルケンへの求電子的付加反応の適用性を明らかとして、その精密合成化学的活用性の拡張を目指すものである。2年計画の初年度の検討において9-nor-azaadamantane N-oxyl (Nor-AZADO)を見出し、このものに由来するオキソアンモニウム塩が電子豊富なアルケンの一つとして位置付けられるシリルエノールエーテルと反応して良好な収率で付加体を形成することを確認した。そして、これよりヒドロキシルアミンが脱離してα,β-不飽和ケトンが得られるという前例のない分子変換を確立することに成功していた。2年計画の最終年度にあたる本年度は、まずNor-AZADOの有用性の基盤を確立するべく、その大量合成法の開発を検討した。その結果、100グラムスケールでNor-AZADOを獲得する合成法の開発に成功し、市販化への途を開くことができた。これよりNor-AZADOに不斉要素を導入したキラルNor-AZADOの合成を試み、鍵基質まで到達した。一方、AZADOに不斉要素を導入したキラルAZADO誘導体を合成してアルコールの不斉酸化、さらには電子豊富アルケン類との反応を検討した。その結果、アルコールの不斉酸化反応において、触媒活性部位のβ位にCyclohexylmethyl基を有するキラルAZADOは、対応する位置にbenzyl基を有するキラルAZADOより高い不斉認識能を示すことを明らかにできた。今後、Cyclohexylmethyl基を有するNor-AZADOの合成を急ぎ、電子豊富アルケン類との反応性を検証する。
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