研究課題/領域番号 |
23659010
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研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
伊藤 彰近 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (10203126)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 光酸素酸化 / ワンポット / フェナシルハライド / イミダゾール / チアゾール |
研究概要 |
我々は既に、スチレン類から光酸素酸化反応によりフェナシルハライド類を一端合成し、同一フラスコ内で連続してアミジン誘導体と反応させることで、ワンポットでイミダゾール誘導体の合成を行うことに成功している。この結果は、光酸素酸化の際に生じる副生成物(ヨードヒドリン類、アルデヒド類)や消費されなかったハロゲンが複素環合成を阻害しないことを示しており、触媒量のハロゲンソースを用いた光酸素酸化/カップリングによる複素環合成が可能であることを示唆している。そこで、アミジン類の代わりにチオアミド類を添加することで同様にフェナシルハライド類を経由するチアゾール類のワンポット合成を試みた。反応条件の精査の結果、スチレンと48%臭化水素酸(1.1当量)、水(50 μL)を酢酸エチル(5 mL)に溶解し、酸素雰囲気中、22W蛍光灯4つを7時間外部照射した後にチオベンズアミド(1当量)、炭酸水素ナトリウム(10当量)と水(500 μL)を加えることで良好な収率で目的のチアゾール類を与えることが分かった。一方、求核剤としてアミド類を用いたオキサゾール類のワンポット合成についても検討を行ったが、フェナシルヨーダイド及びフェナシルブロマイドいずれを経由する方法においても、現時点では目的物を得るには至っていない。そこで、これまで合成に成功したイミダゾール類ならびにチアゾール類に関して、スチレン類からの、段階を踏まないワンポット合成法の検討を行った。すなわち、最初からスチレン類と求核剤ならびに添加剤を反応容器内に入れ、光酸素酸化条件下、反応を検討した。しかしながら、いずれの場合もフェナシルハライド類の生成は観察されるものの、目的の複素環化合物(イミダゾール、チアゾール)を得るには至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
我々が既に得ている情報から、触媒量のハロゲンソースを用いた光酸素酸化/カップリングによる複素環合成が可能であることが示唆されている。しかしながら、実際に反応を行ったところ、目的物である複素環化合物は全く得られない結果となった。しかも、目的物が得られていないにも係わらず、反応終了時のNMR測定から、未反応の求核剤が確認できなかった。この事実は、光酸素酸化条件において求核剤が分解してしまったため反応が進行しなかった可能性が考えられる。求核剤として用いているアミジン、チオアミド、アミド類の分解は予想外であり、求核剤の保護や光源の再検討など反応条件を最初の段階から精査する必要がある。このような理由により、現時点での進捗状況は当初の予定より若干遅れていると言わざる終えない。
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今後の研究の推進方策 |
まず、反応条件下において、各種求核剤が分解しないように新たな光源の検討を行う。現在は蛍光灯からの可視光を照射しているが、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプおよびキセノンランプ等を用いて同様のワンポット反応を検討することで、求核剤を酸化(分解)せず、基質とハロゲン化水素のみを選択的に酸化することができる光源を確定する。一方、求核剤自体の反応条件下での分解を抑えるべく保護基を導入するなどの検討を行う。さらに、反応系中において求核剤が長時間、光酸素酸化条件下に晒されないように、シリンジポンプを用いて反応溶液中への求核剤のslow addition検討などを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
これまでは、専ら蛍光灯による反応を検討してきたが、残念ながら反応が進行しなかったため、使用光源の検討を行う。具体的には、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンランプなどによる反応検討を行う予定であるが、これらはいずれも高価(高圧水銀ランプ@20万円、キセノンランプ@10万円)であるため、次年度に購入する。その他、消耗品(各種試薬、溶媒、ガラス器具)ならびに旅費等は当初の計画通りに使用する予定である。
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