種々のがん細胞に高発現するペプチドトランスポーター(PEPT)は、膜裏打ちタンパク質PDZK1との相互作用が細胞膜表面での発現に必須である。PDZK1は4つのPDZドメインを持ち、種々のトランスポーターのC末端と相互作用する。本研究は、PDZK1とトランスポーターC末端との結合を迅速に評価できる系の構築と相互作用の解析および阻害剤の検討を行った。本研究で確立された評価系においては、His-tagを付与したPDZK1を、市販のNiコートプレートに結合させ、washの後、トランスポーターとGSTのfusionタンパク質を添加し結合させた。阻害剤としてCBPとトランスポーターC末端約40アミノ酸とのfusionタンパク質や、トランスポーターC末端8アミノ酸の合成ペプチドを、GST fusionと共存させて同様の結合反応をさせた。Plateをwash後に、HRP conjugateさせた抗 GST抗体、ついで市販のkitを用いHRPによる反応を吸光度測定することにより結合を定量的に評価した。構築された評価系において、His-PDZK1の野生型と2番目のPDZドメインに変異を持つ変異PDZK1に対して、PEPT2や種々トランスポーターの結合が評価できた。さらに、2番目のPDZドメインに結合するPEPT2は変異体で結合が低下したことから系の妥当性も示唆できた。一方、PDZK1と相互作用するNPT2aまたはC末端4アミノ酸を削ったNPT2a変異体のCBP fusionを共存させて阻害効果を検討したところ両方で阻害が見られたことから、阻害効果は特異的なものでないことが示唆された。そこでより立体障害のない阻害剤として、C末端8アミノ酸を合成したところ濃度依存的な阻害効果が見られた。以上より、PDZK1とPEPTとの相互作用阻害剤を迅速に評価できる系が確立され阻害剤を見出すことができた。
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