研究課題/領域番号 |
23659020
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田邊 一仁 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40346086)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | X線照射 / ドラッグキャリア / インドールキノン / PEG / 両親媒性分子 |
研究概要 |
X線照射によって崩壊し、内包した薬剤を放出するドラッグキャリア分子の開発を進めた。親水性化合物PEGの末端に疎水性の放射線応答分子インドールキノン誘導体を導入した両親媒性化合物IQ-PEGを合成し、物性及びX線照射下における反応特性を調べた。IQ-PEGの会合体形成挙動を動的光散乱(DLS)を用いて観察した。その結果、2mMの濃度でIQ-PEGは会合体を形成し、60.9nmの粒径を持つことがわかった。分子模型から算出したIQ-PEGの分子長は1.2-1.5 nmであることから、この化合物は球状ミセルとは異なる会合体を形成していると考えられる。次に、IQ-PEGの放射線一電子還元反応特性を調べた。2-methyl-2-propanolを含有する希薄水溶液の放射線分解により水和電子が選択的に生成し、高い還元反応特性を示すことから、同水溶液にIQ-PEGを溶解し、低酸素条件でX線を照射した。反応をHPLCで追跡した結果、IQ-PEGは効率よく分解することがわかった。続いて、有酸素条件で同様にX線を照射したところ、低酸素条件下と比べて分解が顕著に抑制された。溶存酸素は水和電子の捕捉作用をもつことが知られていることから、IQ-PEGの分解反応は水和電子による一電子還元反応を経て進行することがわかった。なお、低酸素および有酸素条件下におけるIQ-PEGの消失G値はそれぞれ269.0nmol/J、44.9 nmol/Jであった。以上のように、IQ-PEGは想定通りの機能を持ち、X線照射によって崩壊することがわかった。平成24年度に、生きた細胞を用いた機能評価を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画では、平成23年度に両親媒性化合物の設計と化学的手法による機能評価を終え、平成24年度に細胞を用いた機能評価を進める予定であった。平成23年度はIQ-PEGの合成と評価を終えることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
化学的な手法による評価を終えたシステムから順に、生体細胞を用いたシステム評価を行う。薬剤を内包したナノキャリア分子を、代表者がすでに保有している細胞(EMT6/KU細胞、MCF7細胞、A549細胞等)に投与した後、X線照射を行い、薬効発現を確認する。内包する薬剤としては、従来のプロドラッグ開発研究で用いていた抗がん剤(Camptothecin, 5-fluorodeoxyuridine, Cytorabineなど)を選択し、キャリア分子の有無で薬効が変わるか調査する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度はシステムの評価を継続して進める。主に生化学的な手法による機能評価を進めるために、必要な試薬、ガラス器具等の消耗品を購入する。また、情報交換および成果報告のための旅費を計上する予定である。
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