近年、様々な機能を示す修飾DNAが盛んに研究され、新しいバイオ材料として注目されている。そこで、平成24年度は、DNAオリゴマーのドラッグキャリアとしての可能性を調べるため、リン酸部にアルキル鎖を介してアセチレン部位を導入した両親媒性DNAオリゴマーを合成し、会合体形成能を調べた。 5つのアルキルアセチレン部を連続したリン酸部に導入した11量体のDNAオリゴマー(ODN 1)を合成した後、ベンジルアジド、アスコルビン酸ナトリウム、Cu-TBTAを添加し、クリック反応による化学修飾を行った。反応後HPLCで生成物を分取し、MALDI-TOF MSで分析したところ、5つのアセチレン部すべてにベンジル基が導入されたODN 2が生成したことがわかった。次に、ODN 1とODN 2の会合体形成能を疎水性の蛍光色素ナイルレッドを用いて調べた。各種濃度のODN 1とODN 2共存下でのナイルレッドの蛍光強度を測定し、臨界会合体形成濃度(CAC)を求めたところ、それぞれ169μM (ODN 1)、146μM (ODN 2)であった。このことからODN 1およびODN 2は水溶液中で会合体を形成し、ナイルレッドを内包できることがわかった。さらに、ナイルレッドを薬剤に見立て、細胞内への運搬実験を行った。ODN 1及びODN 2会合体にナイルレッドを内包させた後、A549細胞に投与したところ、細胞内からナイルレッドの強い発光が確認できた。すなわち、両親媒性DNAはドラッグキャリアとして駆動することが示された。
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