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2011 年度 実施状況報告書

眠らないルシフェラーゼを創る

研究課題

研究課題/領域番号 23659021
研究機関京都大学

研究代表者

中津 亨  京都大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (50293949)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2013-03-31
キーワードルシフェラーゼ / ルシフェリン / 発光反応 / X線結晶構造解析
研究概要

ホタルルシフェラーゼの反応は生化学、分子生物学の研究や検査のツールとして広く利用されている。しかしながらこの発光反応は短時間で急激に減衰してしまうという欠点を有しており、これは生成物阻害が原因と考えられている。ルシフェラーゼは2つのドメインを有しており、普段は開閉を繰り返しているが、反応の際は基質を取り込みしっかりと閉じた状態になる。この状態で反応が進行するが生じたオキシルシフェリンが活性部位から離れにくいため生成物阻害が生じる。またCoA存在下において発光が持続することも知られている。そこで、ルシフェラーゼのドメイン間の結合に関わるアミノ酸残基の変異およびCoAとの複合体状態の解析を目指した。生成物阻害解除を引きおこす変異体についてはドメイン間の結合もしくはリガンド結合部位付近のアミノ酸を候補にし、62種類の変異体を作成した。大腸菌で発現を行わせ、その破砕上清を用いて発光スペクトルの測定を行った。するとS201A, S203A, T204A, L206Aと中間体アナログ複合体のときに観測できる200番台のループ構造の変異体に候補がたくさん見つかった。さらに精製標品を用いたところL206Aは野生型よりも減衰が緩やかであった。この部分はAMPを囲む位置に存在する。オキシルシフェリンはAMPによってフタをされた状態になっていることからAMPの位置の固定が生成物阻害につながっている可能性が新たに示唆された。CoAの発光に対する挙動を調べたところ200から500μMのときに最大活性を示した。そこで約15mMのCoA濃度において結晶化を試み、数種類の結晶を得ている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

現在得られているルシフェラーゼについて、多くは発光反応が減少しているもののすでに予定していたものより多くの変異体の作成に成功している。ほとんどの変異箇所は立体構造からは発光反応に直接関わることのないアミノ酸残基であることが推定される。しかしながら活性が劇的に減少する箇所からほとんど変化がない場所まで存在することから、発光に関わるさらなる位置の同定に利用できると考えられる。またルシフェラーゼの特徴であるフラッシュ発光のみならず、フラッシュを生じないglow発光のものが得られており、その挙動の違いと発光強度との関係が明らかになってきており、生成物阻害解除のための基礎データを収集できたと考えている。またCoAとの反応に対する挙動も判明しつつあり生成物阻害解除に向けた基礎実験ができたと考えている。

今後の研究の推進方策

ルシフェラーゼの生成物阻害解除の理解をより深くするためにはルシフェラーゼの発光メカニズムの理解を進めることも重要である。生成物阻害解除にCoAが何らかの状態でルシフェラーゼに関わっていることは明らかである。ルシフェラーゼは反応を行わせるためにドメインがつねに動いていると考えられるが、その途中段階にCoAを認識しやすい構造があると予想される。これはCoA濃度を上げていくと活性が低下していくことからも考えられる。そこで認識能を高めることを目的とした変異体の作成も行うことにより更なる進展を目指している。可能性としてはルシフェラーゼとは構造の基本骨格は共通しているANL super familyのアミノ酸配列と比較し、CoAの認識配列の導入や、oxidation formを形成する際に必要と思われるアミノ酸に変異することである。これによりCoAをより認識しやすい変異体についての実験が可能となる。この情報からCoA複合体さらには、さらなる反応中間状態の構造の取得を目指した実験をさらに行う予定である。

次年度の研究費の使用計画

当初計画予定であったルシフェラーゼ変異体の作成は十分に行うことができた。しかしながらより良質の変異体の作成を行うために予定以上の変異体の作成を必要としたためより時間を必要とした。しかしながらその結果によりこれまで予想していた部位とは違うところにも可能性が見いだされており、可能性が広がっていると考えている。そして今年度はよりCoAの認識をよくするようなCoA認識型ルシフェラーゼの作成を計画した。この実験では通常の点変異体に比べ、ある領域の導入や変異が考えられるため大きな状態の変化の可能性がある。そこでより効率的な精製タンパク質の取得をおこなうためには新たな精製カラムを必要とすると考えており、これは前年度からの繰り越し研究費を使用することを予定している。今年度は昨年度の研究を引き続き行い、さらなる発展した多重変異体、CoA認識変異体の作成およびCoA複合体の結晶化実験を中心に行い、当初の研究費を使用して行う予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2012 2011

すべて 学会発表 (4件)

  • [学会発表] Production of Crystalline SWCNT aggregates2012

    • 著者名/発表者名
      Hikaru Kudo, Kazuhiro Yanagi, Kazutomo Suenaga, Haruka Kobayashi, Taishi Takenobu,Yohei Yomogida、Kunio Hirata, Ryosuke Yoshimune, Toru Nakatsu
    • 学会等名
      フラーレンナノチューブグラフェン総合シンポジウム
    • 発表場所
      東京大学(東京都)
    • 年月日
      2012 – 38
  • [学会発表] 結晶状単層カーボンナノチューブ集合体の作製とその物性2012

    • 著者名/発表者名
      工藤光、柳和宏、小林春花、末永和知、蓬田陽平、竹延大志、吉宗良祐、中津亨
    • 学会等名
      日本物理学会
    • 発表場所
      関西学院大学(兵庫県)
    • 年月日
      2012 – 325
  • [学会発表] Crystal structure of Pex3p-Pex19p complex from methylotrophic yeast Pichia pastoris2011

    • 著者名/発表者名
      Hirai Hidenori, Kyoko Fukushima-Egawa, Hiroyuki Shibata, Toru Nakatsu, Hiroaki Kato
    • 学会等名
      日本蛋白質科学会年会
    • 発表場所
      ホテル阪急エキスポパーク(大阪府)
    • 年月日
      2011 – 68
  • [学会発表] ゲンジボタルルシフェラーゼの発光色制御メカニズムの解明2011

    • 著者名/発表者名
      寺角香菜子、吉宗良祐、五味恵子、梶山直樹、池内秀幸、平竹潤、加藤博章、中津亨
    • 学会等名
      日本結晶学会
    • 発表場所
      北海道大学(北海道)
    • 年月日
      2011 – 1125

URL: 

公開日: 2013-07-10  

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