蛍の発光反応は微生物汚染の検出、遺伝子の発現解析や分子イメージングによる癌の転移経路や薬物の体内動態の解析など、既に幅広く応用されている。しかしながら反応により得られた生成物による阻害の影響により発光がフラッシュ発光となり、発光が持続しないことが、応用研究への妨げとなっている。そこで様々な変異体を作成し、活性を保持したまま生成物阻害が解除される変異体ルシフェラーゼの探索を行った。しかしながら、野生型のルシフェラーゼの活性を完全に保つような変異体は得られなかった。そこで、その中でも持続発光し、活性を有するH247A変異体に着目し、X線結晶構造解析を行い、野生型と比較することにより発光持続型の構造要因を明らかにすることを目的に研究を行った。 H247A変異体と反応中間体アナログであるDLASAとの複合体の立体構造を1.6A分解能で決定した。得られた立体構造を野生型と比較したところN末端ドメインのループ上にあるSer201とC末端ドメインのLys531の相互作用が観測されず、Lys531の位置が変化していた。この構造変化はH247A変異体においてHis247とSer201の水素結合がなくなったことと、変異により空間が生じたためと考えられた。したがってHis247は活性部位近傍におけるN末端ドメインとC末ドメインの相互作用に重要な残基であることが示唆された。またこの相互作用が弱まったことにより、生成物阻害が減少し持続型発光性を示したものと考えられた。すなわち、活性状態の空間配置はとるものの、その構造を崩しやすくするための変異が持続発光に必要であることが示唆された。
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