研究課題
骨髄間葉系幹細胞(MSC)の静脈内投与が、脳梗塞などによる脳障害を改善することが報告されているが、MSC による脳保護作用、特に、静脈内投与されたMSC が血液脳関門(BBB)を通過し脳傷害部位に集積するメカニズムについては不明のままである。そこで本研究では、インビトロBBBモデルと培養脳スライスを活用することにより、MSCのBBB通過機構と脳傷害部位集積機構を解明することを目的としている。平成23年度は、脳微小血管内皮細胞(BMEC)よりなるインビトロBBBモデルを用いて、MSCのBMEC層通過メカニズム解析のための実験系を構築した。さらに、MSCとBMECを蛍光標識することにより、MSCがBMEC層の細胞間隙を通過する「現場」をリアルタイムで捉えることに成功し、論文として報告した。本リアルタイムイメージング系を活用することにより、細胞動態だけでなく、MSCのBBB通過の詳細な分子機構の解析が可能になるものと考えられる。そこで、先ず手始めに、蛍光タンパク質で標識したクロージン-5とカルシウムイメージング用蛍光プローブ分子を用いて、MSC通過中のBMECでのタイトジャンクション分子動態と細胞内カルシウム動態をリアルタイム観察するための実験系構築に着手した。現在、BMECに遺伝子導入するためのウイルスベクターを作製中である。一方、培養脳スライスを用いた脳傷害部位集積機構の解析系構築は予定より遅れている。
2: おおむね順調に進展している
BMECよりなるインビトロBBBモデルを用いて、MSCのBMEC層通過メカニズム解析のための実験系を構築し、さらに、MSCのBMEC層通過をリアルタイムで捉えることに成功して論文として報告している。本リアルタイムイメージング系を活用してMSCのBBB通過機構を解析するため、研究計画を前倒しにして、蛍光標識タンパク質および蛍光イメージングプローブタンパク質の遺伝子導入用のウイルスベクターを作製中である。以上の点では、「当初の計画以上に進展している」が、一方、培養脳スライスを用いた脳傷害部位集積機構の解析系構築は予定より遅れているため、全体として、「おおむね順調に進展している」とした。
平成23年度の研究で構築したリアルタイムイメージング系を活用し、種々の蛍光標識タンパク質および蛍光イメージングプローブタンパク質を用いることにより、MSCのBBB通過機構に関して先端的かつ独創的な研究成果が得られることが期待できるため、平成24年度の研究では本イメージング系を用いたBBB通過機構の研究に特に注力する。
次年度使用額112,147円については、平成23年度に実施した脳内サイトカイン・成長因子発現解析のための消耗品・実験動物の支払に使用する。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)
Neurosci. Lett.
巻: 502 ページ: 41-45
10.1016/j.neulet.2011.07.021
http://www.pharm.hokudai.ac.jp/yakuri/index.html