研究課題/領域番号 |
23659030
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
山口 直人 千葉大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (00166620)
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研究分担者 |
中山 祐治 千葉大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (10280918)
福本 泰典 千葉大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (10447310)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 細胞極性 / シグナル伝達 / 共焦点顕微鏡 / 細胞膜 / 蛋白輸送 / Lyn / ACSL3 / c-Src |
研究概要 |
細胞極性化は、蛋白質などを細胞内の特定位置に非対称かつ秩序をもって分布させ、細胞機能発揮に重要な役割を担っている。上皮細胞ではapical膜とbasolateral膜に極性が維持されるが、癌細胞では epithelial-mesenchymal transition (上皮間葉転換) により極性喪失が起こるので、癌化病因論からも極性化機構の全容解明が待たれる。本研究では、細胞膜蛋白質のapical/basolateral選別解明へ向けた新展開を狙って、極性細胞を用いたSrcメンバーの輸送経路を調べる系の確立を試みた。 まず、極性上皮細胞MDCKを極性化させ、basolateralとapical膜蛋白質を用いて極性化を確認した。Srcキナーゼメンバー (c-Src・Lyn・Fyn・c-Yes)を一過性遺伝子導入したところ、極性化した細胞には殆ど導入できず、また、極性化前の細胞には遺伝子導入できるが、極性化形成時には遺伝子発現が消失する傾向が見られ、極性細胞で発現を随意にコントロールさせる必要が生じた。そこで、極性化誘導後のMDCK細胞において、テトラサイクリンオペレーター・テトラサイクリンリプレッサーシステムを用いて、Lynとc-Srcそれぞれがテトラサイクリン添加により誘導発現できる細胞株の作製を行なった。その結果、極性状態において、テトラサイクリン誘導体ドキシサイクリン添加によりLynまたはc-Srcを誘導発現できるMDCK細胞株の樹立に成功した。極性化MDCK細胞でのLynとc-Srcの局在はかなり異なっていたので、Lynとc-Srcの輸送経路の差異について詳しく調べているところである。また、非極性細胞をタンニン酸処理により、細胞膜と輸送小胞の膜融合を阻害して、Srcメンバーと共輸送されるcargoの特徴を調べているが、現時点では共輸送する蛋白質は見つかっていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、一過性遺伝子発現によって、Src型チロシンキナーゼの局在を調べながら、誘導発現細胞株を作製する予定であった。しかしながら、先に誘導発現細胞株を樹立しなければ、極性細胞でのSrc型チロシンキナーゼメンバーの局在解析が極めて困難であることが判明した。そこで、細胞株樹立を最優先して研究計画を遂行し、Lynとc-Srcの誘導発現MDCK細胞株の樹立に成功した。このMDCK細胞株は、興味ある如何なる蛋白質でも誘導発現することができるので、世界初の非常に有用な極性化細胞系である。この細胞系は、誘導剤添加によって蛋白質生合成を同調的に開始できるので、apical/basolateral sortingに関する細胞生物学的実験のみならず、生化学的解析ができる大変に優れたものである。
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今後の研究の推進方策 |
細胞極性化機構に関する研究に供することができる細胞株が樹立できたことは、大きな成果である。そこで、樹立したLynまたはc-Src誘導発現MDCK株を用いて、細胞内輸送経路の違いを解析し、ACSL3の役割を調べる。また、極性化細胞において、どのような蛋白質でもアピカル・バソラテラル輸送を調べることができるので、アルカリホスファターゼやVSV-G蛋白質を誘導発現できるMDCK細胞株を作製して、一般的なsorting機構を解明する準備を行なう。
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次年度の研究費の使用計画 |
細胞培養、遺伝子実験、細胞染色実験等に用いる消耗品を購入するために使用する。
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