研究概要 |
分泌性タンパク質の分泌性シグナル配列を指標にした「Bioinformatics解析」とゼブラフィッシュを用いた「遺伝子機能解析」を組み合せた分泌性形態形成因子遺伝子探索法を確立した。これまで、数多く(20種類以上)の分泌性因子遺伝子候補を同定し、その発現をゼブラフィッシュ胎児で調べた。これらの遺伝子の内、申請者は2種類の新規な分泌性BMP antagonist遺伝子を発見し、 Brorin , Brorin-likeと名付けた。Zebrafish BrorinとBrorin-likeはいずれも受精後16時間から腹側視床において発現が認められた。その発現様式はいずれも類似していた。受精後24時間では前交連や、後脳の神経節、松果体、下垂体など脳神経系特異的に発現していた。その発現は受精後36時間胚においても持続していた。BrorinとBrorin-like 機能阻害胚の形態観察を行った。いずれの機能阻害胚も前脳の萎縮および脳室の膨張などの脳の形成異常が認められた。従って、BrorinとBrorin-likeは脳形成因子であることが明らかになった。さらに、新規なWnt antagonist遺伝子を発見し、Neucrinと名付けた。Zebrafish Neucrinは胎生期の神経組織特異的に発現していた。Neucrin機能阻害胚の形態観察を行った。その機能阻害胚では中脳、後脳の領域決定に異常が観察された。また、これらの神経組織での神経細胞分化の阻害、神経細胞増殖の増大が観察された。従って、NeucrinはWnt antagonistとして胎生期の神経系の形成に重要な役割を果たしていることが明らかになった。さらに、新規なFgfであるZebrafish Fgf22も同定した。Fgf22は胎生期の中脳・後脳領域に特異的の高発現し、中脳形成に重要な役割を果たしていることが明らかになった。
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