研究課題/領域番号 |
23659041
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
上原 孝 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (00261321)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 酸化ストレス / 抗体 / 神経変性疾患 / 一酸化窒素 / 細胞死 / 小胞体ストレス / 変性蛋白質 |
研究概要 |
スルホン酸化 PDI に対するモノクローナル抗体を作出を目指して,数種のクローンを得ることに成功した.そのうちの一つについて詳細を検討したところ,本抗体はウェスタン解析には適用できないが,非変性条件下では免疫沈降反応に応用可能であることがわかった.つぎに,各種酸化ストレス刺激による PDI のスルホン酸化を細胞レベルで検討したところ,過酸化水素や一酸化窒素刺激に応じて酸化型PDIが蓄積することが認められた.さらには,各種変異型PDI遺伝子を発現させた細胞を利用することで,PDI のスルホン酸化は PDI 酵素活性に重要な2か所のチオレドキシン様ドメインにあるシステイン残基で起きることを確認した.つぎに,S-ニトロシル化蛋白質を特異的に認識するビオチンスイッチ法も利用して,PDI の酸化を抑制する抗酸化薬のスクリーニングが可能であるかどうかを検討した.まず最初に,酸化ストレスによるスルホン酸化PDI 形成の抑制を指標にして既知の数十種類に及ぶ抗酸化薬をスクリーニングしたところ,数種の化合物に活性を認めた.そこで,ビオチンスイッチ法を使用して,直接的な酸化蛋白質還元能を有するかどうかを検討したところ,2化合物を除いて,ほとんどのものはラジカルを消去する活性に起因していることがわかった.現在,この2化合物の特性について調べているところである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は新規に作出した抗体を利用して,抗体の詳細な特性を明らかにすること,ならびに早期診断法の確立に向け,病態生体試料における当該蛋白質の検出/定量系の構築を目標とした.以下の3つの系についての解析を行うことを予定としていた.1.動物レベルにおける酸化型PDIの検出,2.ヒトの病態サンプルにおける検出,3.種々の生体サンプルに適用する である,このうち,2の「種々のヒト神経変性疾患(パーキンソン病ならびにアルツハイマー病)患者死後脳/脳脊髄液に適用して,酸化ストレスが実際にヒトにおいても負荷されているか,とくにPDIがスルフォン酸まで酸化されているか否か証明する」については,入手が困難であり,実行できていない.本年度に遂行できるよう,関係者に引き続き要請していくつもりでいる.しかしながら,同じような変化をもたらす実験系を構築して,本抗体の有用性については確認している.さらに,1と3については,パーキンソン病モデルについて検討し,酸化型(-SO3H)PDI形成が認められるかことを証明し.併せて,酸化にNOが関与しているかも明らかにすることができた.また,本抗体が生体サンプルに対してELISAで検出可能かどうかの検討も行っており,最適なアッセイ条件を確立を目指しているところである.また,先行して2年目の計画も行っており,薬物評価系を構築し,既知の抗酸化薬の特徴付けにも着手している状況である.
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今後の研究の推進方策 |
ここで構築した薬物評価系を用いることで,PDI の酸化を活性酸素種自体の産生抑制,あるいはそれらを捕捉する薬物を特定することを目指す.そのような薬物は PDI の酸化を未然に防ぎ,小胞体ストレスを介して発症する孤発性神経変性疾患の予防薬として応用できる可能性がある.また,PDI の酸化や S-ニトロシル化を還元するような抗酸化薬は,神経変性疾患の治療に貢献することが期待される.今後,PDI の酸化を抑制する抗酸化薬を新たに見出していくとともに,その詳細な機構についてさらに検討していく必要がある.また,これら抗酸化薬がパーキンソン病モデル動物に作用し,酸化を抑制して細胞死/症状を緩和するか否かを検討していくことが重要と思われる.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費のほとんどは抗体の単離・精製,実験動物,実験試薬などの消耗品に使用する予定である.また,最終年度でもあるので研究成果を発表するための旅費(国内出張2回)を計上している.
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