研究課題
挑戦的萌芽研究
生体内のアミノ酸は蛋白質の構成成分としてだけでなく、細胞内シグナル伝達経路を活性化する細胞外の栄養リガンドとしても働いている。生体内のアミノ酸バランスの破綻と様々な疾患との関連が示唆されているものの、両者を直接結びつけるアミノ酸の標的センサー分子は見つかっていなかった。我々は、プロリン、ヒドロキシプロリンなどの細胞外基質の構成アミノ酸によって直接活性化されるカチオンチャネル(Proline-activated Channel: PRAC)を同定した。心筋細胞・心線維芽細胞においては、ジアシルグリセロール活性型の TRPC カチオンチャネル(TRPC3 と TRPC6)が PRAC の構成サブユニットとして関わることが明らかとなり、TRPC3 または TRPC6 を欠損させることでアミノ酸刺激によるカチオン流入とそれに付随して起こる細胞内 Ca2+濃度上昇が完全に抑制された。また、TRPC3または TRPC6 を欠損させたマウスの心臓においてオートファジーの強い誘導が観察された。初代培養ラット新生児心筋細胞や心線維芽細胞の TRPC3/6 を阻害した際にもオートファジーの誘導が観察されたことから、これらのシグナルは蛋白質のリサイクリングと密接に関わる可能性が示された。逆に、プロリン感受性を示さない細胞に TRPC3 と TRPC6 を共発現させることでプロリン感受性が確認できたことから、TRPC3/6 ヘテロ 4 量体チャネルが PRACの分子実体あるいは構成サブユニットとして機能する可能性が初めて示された。
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