研究課題
マスト細胞(MC)は、アレルギーや自己免疫の中心的な役割を果たすが、近年、紫外線(UV)照射による免疫抑制にも必須の役割を果たすことが示された。UV照射による免疫抑制は、MC欠損マウスでは見られず、MC再構成により回復する。さらに、UV照射はMCのリンパ節移行を引き起こし、この移行を阻害すると免疫抑制が消失する。これは、UV照射により移行したMCが、リンパ節で全身性の免疫抑制を引き起こすことを示唆する。しかし、リンパ節へ移行したMCがどのような分子機構で免疫抑制を引き起こすのかについては全く不明である。本研究では、申請者のもつ超微量RNA増幅技術とMC可視化マウスを組み合わせることで、リンパ節へ移行したMCを同定し、発現プロファイル解析によりMC機能の変化を明らかにする。本研究の目的は、リンパ節へ移行したMCがいかなる遺伝子発現プロファイル変動を示すのかを捉えることで、MCによる免疫抑制に働く分子を探索・同定することである。今年度は、連携研究者の椛島ら(京大・医)とともに、1)本研究計画の基盤となる結果の再現性検証と2)強力な免疫制御能をもつγδT細胞を例として皮膚からリンパ節へ移行した細胞のアレイ解析を予定していた。しかしながら、1)再現性検証については「UV照射による免疫抑制は、MC欠損マウスでは見られず、MC再構成により回復する」ような実験条件の探索は困難であり、「免疫抑制がMC欠損マウスで消失する」ことが再現できなかった。一方、2)に関しては、基礎検討を順調に行うことができた。
2: おおむね順調に進展している
当初目的としていたマスト細胞による免疫抑制機能を調べる実験系は再現できなかったが、炎症等の刺激に応じて皮膚局所からリンパ節へ移行したγδT細胞がどのようなプロファイルをもつのかは不明であるため、これを明らかとする。具体的には、炎症刺激依存的にリンパ節に移行したαβおよびγδ CD4+T細胞と、スタティックな条件でリンパ節内にいるαβおよびγδ CD4+T細胞の遺伝子発現プロファイルを比較し、興味深い知見がえられた。
当初目的としていたマスト細胞による免疫抑制機能を調べる実験系は再現できなかったが、炎症等の刺激に応じて局所からリンパ節へ移行したγδT細胞がどのような免疫制御を行うのかは不明であるため、これを明らかとする。具体的には、炎症刺激依存的にリンパ節に移行したαβおよびγδCD4+T細胞と、スタティックな条件でリンパ節内にいる両CD4+T細胞の遺伝子発現プロファイルが得られ、興味深い遺伝子の動きをとらえたので、免疫抑制におけるγδT細胞の役割を調べる。
1)マイクロアレイ解析により、皮膚由来γδCD4+T細胞に特定のケモカイン群が特異的に発現誘導されることを同定したので、RT-PCRおよびFACS解析によりその検証を行う。2)このケモカインのリガンドあるいは機能阻害抗体を用いて、γδの遊走促進および阻害の効果を調べ、γδT細胞遊走の免疫抑制における意義を調べる。
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Nature Immunology
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Biol. Pharm. Bull.
巻: 35 ページ: 408-412
10.1248/bpb.35.408