研究課題/領域番号 |
23659047
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
長谷川 顕子 (山路 顕子) 独立行政法人理化学研究所, 小林脂質生物学研究室, 専任研究員 (20332314)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 脂質動態 / フリップ・フロップ / ホスファチジルセリン |
研究概要 |
細胞形質膜における脂質分布は内外層で非対称であり、ホスファチジルセリン(PS)などのアミノリン脂質は通常は内層に局在し、さらに細胞内外の状況に応じてその分布は劇的に変化することが知られている。このようなリン脂質の特徴的な細胞内動態には、脂質をエネルギー依存的に脂質二重層を横切らせるフリップ・フロップ機構が働いていると考えられているが、脂質の移行メカニズムや活性調節機構などの詳細な分子機構は明らかになっていない。本研究では、申請者がこれまでに行ってきた形質膜におけるPSの動態に異常がある培養細胞変異株の解析結果を足掛かりにして、フリップ・フロップ機構に関わる分子の同定および機能解析を行うことにより、フリップ・フロップの制御機構や細胞機能との関連を解明することを目的としている。これまでに、フリップ・フロップの欠損株と考えられる変異株の責任因子として、あるアダプター蛋白質を同定している。このアダプター蛋白質にはいくつかのアイソフォームが存在することが知られている。そこで、各アイソフォームが脂質動態に関与しているかどうかを明らかにするため、RNAi法により親株での各アイソフォームの発現を抑制し、欠損株で見られるような異常形質が再現されるかどうかを検討した。その結果、一部のアイソフォームについて脂質動態への関与の可能性が示唆された。また、フリップ・フロップ機構においてアダプター蛋白質と協調的に働き、かつ直接的に脂質分子に作用する分子の同定を行うため、FLAGタグを付加したアダプター蛋白質を細胞に発現させ、免疫沈降実験を行うことにより、パートナー蛋白質の同定を試みた。現在のところパートナー蛋白質の同定には至っていないが、他の手法とも併せて解析を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フリップ・フロップ機構への関与の可能性が考えられるアダプター蛋白質について、様々な解析を行うことができた。既報のフリップ・フロップ関連分子との相関の有無なども検討しており、また解析を進める中で手法等についての問題点や解決方針も明確にできたので、今後の研究の方向性を考える有益な情報が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
フリップ・フロップの分子機構および細胞機能への関与を明らかにするため、これまでに同定したアダプター蛋白質を足掛かりに、引き続きフリップ・フロップ機構関与分子の同定・機能解析を行う。アダプター蛋白質のパートナーの同定にあたっては、膜蛋白質の同定に適した手法を試みるとともに、細胞内シグナル伝達分子にも着目して解析を行い、フリップ・フロップの制御機構の解明を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の解析では、アダプター蛋白質のパートナーの同定には至らなかったため、これに関連する抗体・siRNA等の試薬類の購入を行わなかった。そのため、今年度使用予定であった研究費に未使用額が発生した。パートナー同定のための諸解析は来年度に引き続き行う予定のため、この未使用研究費はそれに充てる。具体的には次のとおりである。本研究では、フリップ・フロップに異常を持つと考えられる変異株の性状解析や細胞における脂質動態解析など、細胞を用いた解析が必須であるため、細胞培養やその解析に必要な試薬・器具等を購入する。また、免疫沈降実験などの生化学的解析に必要な試薬・器具等やRNAi実験に必要なsiRNA、抗体、オリゴヌクレオチド、阻害剤などの試薬類を購入する。
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