プロテインノックダウン活性を示す化合物として我々が開発した最初のハイブリッド化合物SNIPER-2は、標的タンパク質CRABP-IIを減少させるだけでなく、ユビキチンリガーゼcIAP1を減少させる。cIAP1を減少させない化合物としてSNIPER-4を合成し、SNIPER-4がSNIPER-2より長時間にわたってCRABP-IIタンパク質を減少させる事を明らかにした。これらのSNIPERによるCRABP-IIタンパク質の減少は、プロテアソーム阻害剤を添加することにより抑制されたことから、標的タンパク質がプロテアソームで分解されている事がわかった。またSNIPER添加によりCRABP-IIがcIAP1によってポリユビキチン化されることを明らかにした。次に各種の細胞内局在シグナルを付加したCRABP-IIを細胞に発現させ、SNIPERによるCRABP-IIの減少を比較した。その結果、細胞質、細胞膜に局在させたCRABP-IIタンパク質は減少したが、ミトコンドリアに局在するCRABP-IIタンパク質は減少しなかった。これらの結果から、SNIPERは細胞質、細胞膜近傍に存在するタンパク質を分解する事ができるが、ミトコンドリア等の細胞内コンパートメントに存在するタンパク質は分解できないことが明らかになった。次に新しいSNIPERとして、乳がんの増殖に重要なエストロゲン受容体(ER)を標的とするSNIPER(ER)をデザイン・合成した。SNIPER(ER)は乳がん細胞でERを減少させ、速やかに細胞死を誘導した。詳しい解析の結果、SNIPER(ER)は乳がん細胞にネクローシス様の細胞死を誘導する事がわかった。
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