研究課題
Ca2+ 動員セカンドメッセンジャ―であるサイクリックADP-リボース(cADPR)は、膵臓β細胞からのインスリン放出を促すことが知られている。本研究では、申請者が独自にcADPRの安定等価体として創製した炭素環アナログであるサイクリックADP-カーボサイクリックリボース(cADPcR)をプロトタイプとして、cADPR標的タンパク質同定のためのバイオロジカルツールを創出し、cADPRが関与するβ細胞におけるインスリン分泌機構解明に貢献することを目指す。さらに、新しい作用機序を有する新規糖尿病治療薬創製への端緒を開くことを目的としている。 23年度においては、ビオチン結合型のcADPR標的タンパク質同定用プローブ合成のための前駆体の合成経路を確立した。先ず、独自に開発したビニルシリル基を用いる立体選択的な分子内炭素鎖導入ラジカル反応を利用して、鍵ユニットである4-分枝型カーブサイクリックリボース誘導体を合成した。さらに、同ユニットとイミダゾ―ルヌクレオシドユニットとの縮合によってN1置換アデノシン構造を構築し、2つのリン酸基の導入、分子内ピロリン酸環化反応を経てNI-カーボサイクリック部4-位にプロパギル基を導入したcADPcR誘導体を合成することに成功した。一方、ビオチンをS-S結合を介して導入したアルキルアジドの合成法も確立した。今後、両分子間のHüisgen反応を検討し、ビオチン結合型プローブを合成し、標的タンパク質の同定実験を実施する予定である。
3: やや遅れている
目的のプローブ合成のために4-位に導入した炭素鎖の立体障害が、各段階の反応の進行を妨げたとと考えられる。そのために、目的物合成実験の進展が当初の予定よりやや遅れた。
光反応性プローブの合成に重点を置き、先ず第一の目標として達成する。さらに合成したプローブを用いて、ウニ卵ホモゼネートにおける標的タンパク質を同定する。この実験で得られる適切な反応条件や単離精製のためのクルマトグラプィー等に関する知見を基に、続いてβ細胞での標的タンパク質の単離精製を目指す。
次年度使用額の1,019,046円のうち、121,930円は平成23年度に実施した実験の試薬購入の支払いに利用する。残り897,116円については、研究計画の変更により、予定していた実験を次年度に行うこととなったため発生したものであり、平成24年度に行う当該実験のための試薬を購入する予定である。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 3件)
Org. Biomol. Chem.
巻: 10 ページ: 736-745
10.1039/c1ob06496g
J. Med. Chem.
巻: 55 ページ: 2960-2969
10.1021/jm201627n
巻: 55 ページ: 2970-2980
10.1021/jm201628y
Adv. Synth. Cat.
巻: in press ページ: in press
巻: 9 ページ: 1219-1224
ACS Med. Chem. Lett.
巻: 2 ページ: 353-357
J. Am. Chem. Soc.
巻: 133 ページ: 14109-14119
Mol. Pharmaceut.
巻: 8 ページ: 1698-1708
Bioorg. Med. Chem.
巻: 19 ページ: 5984-5988