研究課題
重症急性呼吸器症候群の原因ウイルス(SARSコロナウイルス、SARS-CoV)のシステインプロテアーゼ阻害剤創製を通じ、共通科学基盤に基づく当該プロテアーゼ阻害剤の創製手法確立をめざす研究である。創薬的に意義の有るSARS-CoVプロテアーゼ阻害剤開発に注力してきたが、最終年度は昨年得られた強力なトリペプチド型阻害剤をリード化合物に、より低分子量のジペプチド型阻害剤創製に注力した。活性評価はジョンズホプキンス大学フレール教授及び京都薬科大学赤路教授に実施いただいた。トリペプチド型阻害剤のP3部位に当るVal残基の除去後、P4部位のアシル基を誘導し、活性向上を目論んだ。その結果、Val残基除去後、阻害活性は一旦低下したが、P4部位のアシル構造をインドールを含む構造へ変換することで、阻害活性は再度上昇し、酵素阻害活性(Ki)値が 6 nM という強力なジペプチド型阻害剤の合成に至った。本阻害剤はITCを用いた熱力学的解析でも、結合定数が16 nMと強力で、Ki値との良い相関が観察された。本化合物を含む高活性阻害剤は創薬における潜在的な候補化合物と言える。これらの研究は3報の論文として投稿し、2報が採択されている(BMC 21,412 (2013); DOI: EJMC,10.1016/j.ejmech.2013.05.005、1報はEJMCにて審査中)。現在、同様なプロテアーゼを有する口蹄疫ウイルスに対する抗ウイルス試験にも供している。今後ウイルスの範囲を広げ、システインプロテアーゼ阻害剤の一般的創製手法の確立に繋げたい。一方、阻害剤創製において固相化学を用いる効率的な高親和性基質スクリーニング法の確立については、ビオチン化試薬に加え、基質を細胞内へ導入可能な固相オリゴアルギニン化試薬の開発を現在進めている。酵素阻害剤の効率的スクリーニング系開発に繋げていく所存である。
すべて 2013 その他
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Bioorganic & Medicinal Chemistry
巻: 21(2) ページ: 412-424
DOI:org/10.1016/j.bmc.2012.11.017
European Journal of Medicinal Chemistry
巻: in press ページ: 999
10.1016/j.ejmech.2013.05.005
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