生体内では、活性酸素種などにより塩基が構造修飾を受け、突然変異を生じることが知られている。塩基への構造修飾を厳密に制御して行うことができれば、複製を通じた変異誘導、すなわち人工的な塩基配列の書き換えが期待できる。そこで、本研究では、G:C→A:Tへの化学的なDNA配列書き換えを目指し、DNA配列中のグアニンに対するピンポイントでの構造修飾を行うこととした。具体的には、グアニン6位の酸素をアルキル化してO-6アルキルグアニンへ構造変換する人工核酸ツールを開発する。本研究期間では、グアニン6位での架橋反応を期待して設計した反応性核酸塩基である、6-oxo-4-vinylpynimidine(4-VPy)が設計通りに架橋を形成するか評価を行った。 4-VPyをオリゴデオキシヌクレオチド中に組み込むために必要となるアミダイトユニットは、4-chloro-6-hydroxypynimidineを出発原料とし、6工程を経て合成した。鍵となるグリコシル化は、Hoffer's Chlorosugarと4-chloro-6-hydroxypynimidineをsilyl-Hilbert-Johnson反応条件により行い、目的とするβ体とαが1:1.1の比率で得られた.これら異性体は中圧フラッシュクロマトグラフィーにより容易に分離が可能であった。標的DNAとの架橋反応はポリアクリルアミドゲル電気泳動で確認したところ、架橋収率は24時間で10%程度と低いものの架橋反応が進行することが見出された。そこで現在は、反応収率のさらなる向上を目指し、ピリミジン骨格にハロゲンなど電子吸引性基を有する反応性核酸を新たに設計・合成を行なっており、これら新しい反応性核酸塩基によってグアニンとの効率的な架橋反応を達成する予定である。
|