本研究では、I型IFNが結合可能なIFNAR1とIFNAR2への結合性が変化したIFNα8の変異体を我々独自に開発してきたファージ表面提示法を駆使して作製した。まず、構造変異体を提示したタンパク質ライブラリの作製に向けて、各受容体(IFNAR1、IFNAR2)への結合に関与するドメイン中のアミノ酸を網羅的に変化させたIFNα8の構造変異体遺伝子ライブラリを作製した。IFNAR1との結合領域を網羅的に改変したライブラリ1、IFNAR2との結合領域を網羅的に改変したライブラリ2という2種類のライブラリを作製し、ライブラリ1では80万種類、ライブラリ2では2億1千万種類もの多様性を持ち、それぞれ独立したクローンからなることが確認された。その中から抗ウイルス活性あるいは抗腫瘍活性に優れた機能性IFNα8の構造変異体をスクリーニングするため、各受容体に結合する変異体を回収するとともに、IFNα8構造変異体のリコンビナントタンパク質を作製した。IFNAR2に対してパンニングを行うことで、親和性が異なる38クローンを回収することができた。回収されたIFNα8構造変異体の生物活性を検討した結果、そのうちの4つのクローンでシンドビスウイルスを用いたバイオアッセイにて野生型よりも優れた抗ウイルス活性を示すことが明らかになった。さらに、抗腫瘍効果に関して検討した結果からも上記4つのクローンが野生型よりも優れた活性を示すことが明らかになった。また、IFNα8に関しては、その立体構造が知られていなかったが、その立体構造をNMR解析したた。今後、これらの4クローンを用いて、活性増強メカニズムの解析を行うとともに、新規バイオ医薬品としての応用に関する研究を進める予定である。
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