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2011 年度 実施状況報告書

固定化ポーチュラカPPOによる実用的フェノール系内分泌撹乱物質処理システムの開発

研究課題

研究課題/領域番号 23659064
研究機関大阪大学

研究代表者

平田 收正  大阪大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (30199062)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2013-03-31
キーワード内分泌攪乱物質 / 生体機能利用 / 環境 / 水質汚濁・土壌汚染防止・浄化 / 酵素
研究概要

本研究では,フェノール系内分泌攪乱物質に対する優れた酸化活性を持つポーチュラカポリフェノールオキシダーゼ(PoPPO)を用いた,排出源処理に応用可能な新規システム構築を目指している.初年度はPoPPO遺伝子の同定,組換え技術を用いた本酵素の大量調製系の確立,およびPoPPO固定化方法の検討を行った. PoPPO遺伝子の同定については,現在までに5種類の遺伝子(PoPPO1~5)のクローニングに成功した.当該遺伝子を導入・発現したタバコ培養細胞BY-2を作製し,粗酵素抽出液中のPPO活性評価を,チロシンを基質として行ったところ,PoPPO1, 2, 4, 5導入細胞において活性を確認した.またPoPPO2, 5導入細胞については,ビスフェノールA (BPA),エストラジオール,アルキルフェノール類を水酸化することを確認し,得られた遺伝子クローンがフェノール系内分泌攪乱物質の酸化活性を有することを示した. PoPPO固定化方法の検討に関しては,ポーチュラカ根の抽出物をアルギン酸ビーズにより包括する,あるいは共有結合を介してガラスビーズ表面に固定化する方法を検討した.その結果,いずれの方法においてもBPA酸化活性は維持された状態でのPoPPOの固定化に成功した.PoPPO固定化ビーズを用いてBPA溶液を繰り返し処理することでその耐久性を評価したところ,アルギン酸ビーズよりガラスビーズの方が優れていた.また,PoPPO固定化ガラスビーズと粗酵素溶液を室温で保存したところ,後者は3週間で完全に失活したが,前者では保存開始時に比べ40%の活性が維持された.凍結状態で保存した場合,粗酵素溶液においても保存開始時に比べ50%の活性が維持されたが,固定化ビーズでは75%の活性が維持された.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本研究では,優れたフェノール系内分泌攪乱物質の酸化活性を持つポーチュラカポリフェノールオキシダーゼ(PoPPO)を用いた,排出源処理に応用可能な新規システム構築を目指している.初年度はPoPPO遺伝子の同定,組換え技術を用いた本酵素の大量調製系の確立,およびPoPPO固定化方法の検討を目標とし,研究を進めた. PoPPO遺伝子の同定に関しては,ポーチュラカ根より5種類の遺伝子クローンを獲得し,これらの遺伝子を導入したタバコ培養細胞BY-2により,当該遺伝子が内分泌攪乱物質代謝活性を有することを確認し,当初の予定よりも早く目的を達成することができた.本内容をまとめた論文はPlant Biotechnology誌に平成24年4月23日に受理された.加えて,ポーチュラカのBPA代謝機構に関する論文もBiosciences Biotechnology Biochemistry誌に2報掲載され,これらも当初の予定を大きく上回る結果と言える. PoPPO酵素の大量調製系については,タバコ培養細胞での組換え酵素の発現には成功したが,さらなる高発現や大腸菌などの宿主を用いた発現に関して検討の余地が残されている。 PoPPO固定化方法の検討については,アルギン酸ビーズ,ガラスビーズについて検討を行い,いずれも活性を維持したまま固定化することに成功した.さらに耐久性,保存性についても検証を行い,当初の計画通りの成果を挙げている. 総じて,当初の計画通り,あるいはそれ以上の成果を挙げていると言える.

今後の研究の推進方策

当初の計画通り効率的なフェノール系内分泌攪乱物質処理が可能なポーチュラカPPO固定化技術の確立を行う.具体的には精製酵素の固定化,ガラスビーズへの共有結合に用いる試薬,ビーズの微小化を検討する. 続いて,得られた固定化酵素について各種フェノール系内分泌攪乱物質の処理速度,代謝物の解析,これらが複合的に存在する場合の処理能の変化について解析する.また,BPAをモデル対象物質として,pH,光などの物理的因子,排水などに存在し得る夾雑物などの化学的因子が固定化酵素の処理能に及ぼす影響を検証する. さらに,実用化に向けて,酵素固定化担体を充填したカラムを作成し,フェノール系内分泌攪乱物質含有モデル排水を通液し,その処理能を評価する。カラムのスケールアップによる,処理能の変動についても解析する. これまで当初の計画通り,あるいはそれ以上の成果を挙げる事が出来ている為,研究体制はこれまでのものを維持し,より一層の研究推進を目指す.

次年度の研究費の使用計画

平成24年度は,物品費として\400,000計上し,酵素精製に必要なカラム,固定化工程に必要な試薬,担体材料,内分泌攪乱物質残量測定に必要なHPLC用の溶媒,カラム,バイアルなどの消耗品購入に使用する.備品を購入する予定は無い.また,植物細胞分子生物学会,生物工学会,農芸化学会で研究成果を発表するための旅費として\200,000計上している.さらに,環境中の内分泌攪乱物質汚染状況について詳しい専門家を招きセミナーを開催する予定としており,その謝金,アルバイト料として\100,000を計上している.また,固定化に関する論文執筆時の英文校閲,および論文掲載料として\100,000を計上している.

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Characterization of bisphenol A metabolites produced by Portulaca oleracea cv. using liquid chromatography coupled with tandem mass spectrometry2012

    • 著者名/発表者名
      Watanabe, I., Harada, K., Matsui, T., Miyasaka, H., Okuhata, H., Tanaka, S., Nakayama, H., Kato, K., Bamba, T., Hirata, K.
    • 雑誌名

      Biosci. Biotechnol. Biochem.

      巻: in press ページ: in press

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Molecular cloning and partial characterization of a peroxidase gene expressed in the roots of Portulaca oleracea cv., One potentially useful in the remediation of phenolic pollutants2011

    • 著者名/発表者名
      Matsui, T., Nomura, Y., Takano, M., Imai, S., Nakayama, H., Miyasaka, H., Okuhara, H., Tanaka, S., Matsuura, H., Harada, K., Bamba, T., Hirata, K., Kato, K.
    • 雑誌名

      Biosci. Biotechnol. Biochem.

      巻: 75 ページ: 882-890

    • DOI

      10.1271/bbb.100823

    • 査読あり
  • [学会発表] 園芸植物Portulaca oleracea由来ポリフェノールオキシダーゼの内分泌攪乱物質代謝能の解析2011

    • 著者名/発表者名
      金田洋和,松井健史,黒田友佳子,東本祐佳,奥畑博史,田中聡,松浦秀幸,原田和生,宮坂均,加藤晃,平田收正
    • 学会等名
      第29回日本植物細胞分子生物学会
    • 発表場所
      九州大学箱崎キャンパス
    • 年月日
      2011年9月8日
  • [学会発表] 園芸植物Portulaca oleraceaによる内分泌攪乱物質代謝機構の解明2011

    • 著者名/発表者名
      金田洋和,松井健史,黒田友佳子,東本祐佳,奥畑博史,田中聡,松浦秀幸,原田和生,宮坂均,加藤晃,平田收正
    • 学会等名
      第14回環境ホルモン学会
    • 発表場所
      東京大学山上会館
    • 年月日
      2011年12月2日
  • [図書] 環境浄化:植物による環境ホルモン分解と排水処理への応用 (植物機能のポテンシャルを生かした環境保全・浄化技術 -地球を救う超環境適合・自然調和型システム-2011

    • 著者名/発表者名
      松浦秀幸,原田和生,宮坂均,平田收正
    • 総ページ数
      31-37
    • 出版者
      シーエムシー出版

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公開日: 2013-07-10  

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