現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
明らかにする点:1)データベースを基に予測された7つの候補酵素(CDK4, CDK5, CDK7, ERK1, ERK2, p38α, p38β)の中からHIVカプシドコア中のVHQAISPRTL配列のSer16残基をリン酸化する酵素を特定し、その酵素の阻害剤がHIV脱殻過程を阻害できるか明らかにする。2)General 化合物LibraryおよびNatural Product Libraryの中からリン酸化Ser-Pro配列およびリン酸化Thr-Pro配列と類似骨格を持つと予想される新規低分子Pin1阻害剤を探索し、Pin1阻害活性の検討及びその阻害剤がHIV脱殻過程を阻害できるか明らかにする。当初の計画で、A) カプシドコアをウイルス粒子内で特異的にリン酸化するキナーゼの特定およびA) in vitro 脱殻アッセイ(平成23年度)が計画として予定されていた。Pin1依存性の脱殻に関与するカプシドコアのSer16残基は、ウイルスが宿主細胞より出芽後リン酸化を受けることを申請者は明らかにしており、またHIVの株間で高度に保存されている。このSer16残基をリン酸化を受けないアミノ酸に変異させた場合、宿主細胞由来キナーゼによってカプシドコアのSer16残基がリン酸化を受けなくなる。その結果、リン酸化Ser-Pro配列を特異的に認識するPin1がカプシドコアと相互作用できなくなり、HIVの脱殻過程そのものが阻害される。したがって、カプシドコアのSer16残基を特異的にリン酸化する酵素の阻害剤は、宿主因子を標的としているため、ウイルスが変異獲得による薬剤耐性能を獲得することに対抗できる新たな抗HIV剤開発につながる可能性があると考えた。本年度、そのSer16をリン酸化するキナーゼを特定し、市販のERK2阻害剤で脱殻過程が阻害されることを証明できた。
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