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2011 年度 実施状況報告書

薬剤耐性ウイルス出現を克服するためのHIV脱殻機構を標的とした治療薬開発

研究課題

研究課題/領域番号 23659066
研究機関熊本大学

研究代表者

三隅 将吾  熊本大学, 生命科学研究部, 准教授 (40264311)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2013-03-31
キーワードHIV / 薬剤耐性 / Pin1 / 脱殻 / キナーゼ
研究概要

背景:HIV感染症に対する抗ウイルス剤の開発と治療法はウイルス感染症治療のなかで近年最も進歩したものの1つである。しかし、多剤併用療法を受けながらも効果が十分にあがらず、ウイルスの増殖抑制に失敗する症例も数多くあり、治療薬剤に対する耐性を獲得したHIV変異株の出現が主な理由として挙げられる。そこで、薬剤耐性変異ウイルスを標的とした新たな薬剤開発が求められている。全体構想:申請者は、HIV RNAを保護しているHIVカプシドコアが崩壊する過程(脱殻過程)に関与する宿主因子プロリルイソメラーゼPin1を発見した。本研究では、Pin1がカプシドコアを認識する部位に存在するSer16残基のリン酸化を触媒する酵素の特定とその阻害剤の探索、およびPin1に対する阻害剤を探索することで、薬剤耐性ウイルスの出現を抑えた新規抗HIV剤の探索を行う。具体的な目的:1)キナーゼデータベースを基に予測された候補酵素のHIVカプシドコアin vitroキナーゼアッセイの構築と阻害剤のスクリーニング2)リン酸化Ser-Pro配列およびリン酸化Thr-Pro配列と類似骨格を持つ低分子Pin1候補阻害剤のスクリーニングと抗HIV効果の判定平成23年度は以下の実施項目を計画していた。A) カプシドコアをウイルス粒子内で特異的にリン酸化するキナーゼの特定(平成23年度)in vitroキナーゼアッセイを行うために、7つに絞り込んだ候補キナーゼは、全て組換えタンパク質として調製が完了していた。本年度、Ser16をリン酸化する酵素は、ERK2であることが証明できた。実際にERK2阻害剤を使って、持続感染細胞に処理するとウイルスの脱殻過程が阻害されることも証明できた。現在本研究成果に関しては、論文を投稿している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

明らかにする点:1)データベースを基に予測された7つの候補酵素(CDK4, CDK5, CDK7, ERK1, ERK2, p38α, p38β)の中からHIVカプシドコア中のVHQAISPRTL配列のSer16残基をリン酸化する酵素を特定し、その酵素の阻害剤がHIV脱殻過程を阻害できるか明らかにする。2)General 化合物LibraryおよびNatural Product Libraryの中からリン酸化Ser-Pro配列およびリン酸化Thr-Pro配列と類似骨格を持つと予想される新規低分子Pin1阻害剤を探索し、Pin1阻害活性の検討及びその阻害剤がHIV脱殻過程を阻害できるか明らかにする。当初の計画で、A) カプシドコアをウイルス粒子内で特異的にリン酸化するキナーゼの特定およびA) in vitro 脱殻アッセイ(平成23年度)が計画として予定されていた。Pin1依存性の脱殻に関与するカプシドコアのSer16残基は、ウイルスが宿主細胞より出芽後リン酸化を受けることを申請者は明らかにしており、またHIVの株間で高度に保存されている。このSer16残基をリン酸化を受けないアミノ酸に変異させた場合、宿主細胞由来キナーゼによってカプシドコアのSer16残基がリン酸化を受けなくなる。その結果、リン酸化Ser-Pro配列を特異的に認識するPin1がカプシドコアと相互作用できなくなり、HIVの脱殻過程そのものが阻害される。したがって、カプシドコアのSer16残基を特異的にリン酸化する酵素の阻害剤は、宿主因子を標的としているため、ウイルスが変異獲得による薬剤耐性能を獲得することに対抗できる新たな抗HIV剤開発につながる可能性があると考えた。本年度、そのSer16をリン酸化するキナーゼを特定し、市販のERK2阻害剤で脱殻過程が阻害されることを証明できた。

今後の研究の推進方策

1)カプシドコア特異的キナーゼに対する新規阻害剤候補の探索(平成24年度) →ERK2に対する阻害剤をキナーゼをスクリーニングする。候補のライブラリーは、九州保健科学大学の大川原教授が保有する化合物ライブラリー、および東京大学 生物機能制御化合物ライブラリー機構の化合物ライブラリーの中から候補阻害剤を探索する予定にしている。2)in vitro脱殻阻害判定(平成24年度)→1)で得られた候補阻害剤をウイルス産生細胞の培地中に加え、調製したウイルスを国立感染症研究所 巽先生がつくられたMAGIC-5 assay (Antimicrob. Agents Chemother. (2001):495-501)を用いて実際に、処理されたウイルスの感染の有無を確認し、脱殻過程が阻害されているか特異的プライマーを用いたqPCRによって解析する。3)in vitro脱殻阻害判定(平成24年度)→2)で選択されてきた阻害剤が脱殻過程そのものを阻害しているか確認する。方法としては、in vitro uncoating assay(J. Biol. Chem. (2010) 285:25185-95)を用いる予定にしている。

次年度の研究費の使用計画

本年度の研究体制は以下のようになる。1)キナーゼデータベースを基に予測された候補酵素のHIVカプシドコアin vitroキナーゼアッセイの構築と阻害剤のスクリーニングに関して → B) カプシドコア特異的キナーゼに対する新規阻害剤候補の探索(平成24年度) C) in vitro脱殻阻害判定(平成24年度)2)リン酸化Ser-Pro配列およびリン酸化Thr-Pro配列と類似骨格を持つ低分子Pin1候補阻害剤のスクリーニングと抗HIV効果の判定 → B) in vitro脱殻阻害判定(平成24年度)消耗品(培地および血清、培養器具、イムノプレート、基質および二次抗体、超遠心チューブ、p24ELISAkit)の費用として170万円ほどを計上したいと考えている。また、研究成果を発表するための費用を15万円、さらに論文等の出版費用を35万円を計上したいと考えている。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2012 2011

すべて 学会発表 (4件)

  • [学会発表] HIV感染を制御する細胞性因子の探索と経膣感染防止を目的とした HIV粘膜ワクチン開発2012

    • 著者名/発表者名
      三隅将吾
    • 学会等名
      日本薬学会第132年会(招待講演)
    • 発表場所
      札幌
    • 年月日
      2012 – 329-31
  • [学会発表] HIV脱殻制御機構に関する解析2011

    • 著者名/発表者名
      堂地赳生、高宗暢暁、杉本幸彦、庄司省三、三隅将吾
    • 学会等名
      平成23年度日本薬学会九州支部大会
    • 発表場所
      福岡
    • 年月日
      2011 – 1210-11
  • [学会発表] HIVキャプシドのSer16リン酸化による脱殻制御機構に関する解析2011

    • 著者名/発表者名
      堂地赳生、高宗暢暁、杉本幸彦、庄司省三、三隅将吾
    • 学会等名
      日本エイズ学会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2011 – 1130-122
  • [学会発表] 翻訳後修飾を標的とした脱殻制御機構に関する解析2011

    • 著者名/発表者名
      堂地 赳生、高宗 暢暁、杉本 幸彦、庄司 省三、三隅 将吾
    • 学会等名
      第10回 次世代を狙う若手ファーマバイオフォーラム PBF2011
    • 発表場所
      仙台
    • 年月日
      2011 – 108-9

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公開日: 2013-07-10  

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