本研究では、医薬品の代謝を触媒するチトクロームP450 2D6 (CYP2D6)において、エキソン上遺伝子多型のみでは説明できない酵素活性の個人差を明らかにするために、イントロン上遺伝子多型の影響を解析した。仮に本研究により、CYP2D6遺伝子のイントロン上に特定のSNPが存在し、スプライシングエラーやトランスクリプション効率の変化が起こり、CYP2D6発現量の変化が認められれば、これまでに明らかではなかったCYP2D6発現量の個人差に関わるメカニズムが解明される。平成24年度は、平成23年度に同定したCYP2D6イントロンSNPを含むバリアント遺伝子を哺乳動物発現用ベクターにサブクローニングし、サル腎由来COS-7細胞中にCYP2D6タンパク質を発現させた。通常はCYP2D6 cDNAを発現プラスミドにクローニングするが、今回の研究ではイントロン領域のSNPがCYP2D6タンパク質の発現量に影響を及ぼすか否かを解析するため遺伝子全長を挿入した。CYP2D6タンパク質の定量に関しては、COS-7細胞を破砕後、遠心法によりミクロソーム画分を調製した。得られたタンパク質をSDS-PAGEにより分離後、抗CYP2D6抗体を用いたウェスタンブロットによりその発現を確認した。その結果、CYP2D6*41において、野生型であるCYP2D6*1と比較して35%の発現低下が認められた。それに対して、今回、新規に同定した4種類のバリアント遺伝子では野生型と同程度の発現量であった。今後は、さらに解析数を増やすことで新規のイントロンSNPが同定されることが予想され、今回確立したCYP2D6遺伝子挿入プラスミドによるタンパク質発現量評価系でCYP2D6発現量の個人差に関わるメカニズムが明らかにされる可能性がある。
|