研究課題
スタチンには、コレステロール低下作用によらない「多面的作用」があることが知られているが、その分子機構の詳細は、まだ明らかではない。我々は、この点について培養細胞レベルからヒトに及ぶ検討を行い、以下のような新知見を得ている。(1)スタチンは、脂溶性・水溶性に関わらず、血管内皮細胞でSmg-GDSの発現を用量依存的・時間依存的に亢進させる。(2)この作用は、GSK-3bやAKt/PI3Kの阻害薬で抑制されるが、メバロン酸代謝経路の抑制では全く影響を受けない。(3)スタチンにより発現が亢進したSmg-GDSは、低分子量Gタンパクの一つであるRacと複合体を形成し核内へ移行し、そこでproteasomeによりRacが分解される。(4)一方、SmgGDSは、もう一つの低分子量GタンパクであるRhoとは結合せず、Rhoは核内には移行せず、細胞質内に留まる。(5)Smg-GDS欠損マウスでは、正常マウスでは認められるアンジオテンシンIIによる心血管肥大作用に対するスタチンの抑制効果が欠落している。(6)正常健常人において、アトルバスタチンやプラバスタチンの投与(2週間)は、末梢血白血球中のSmgGDS活性を有意に増加させ、興味あることに、その増加は、酸化ストレスマーカーの低下とは相関したが、LDL-コレステロールの低下とは相関しなかった。以上のように、スタチンの有する多面的作用の本質的な分子機構に、SmgGDSが重要な役割を果たしていることが明らかになりつつある。本研究を通して、SmgGDSに関する新しい創薬やスタチンの副作用軽減につながる新技術の開発につながることが期待される。
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