研究課題/領域番号 |
23659076
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
玉井 郁巳 金沢大学, 薬学系, 教授 (20155237)
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研究分担者 |
中西 猛夫 金沢大学, 薬学系, 准教授 (30541742)
国嶋 崇隆 金沢大学, 薬学系, 教授 (10214975)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 輸送体 / 肝細胞 / 薬物間相互作用 / 薬物誘導性肝障害 / 副作用 / 胆汁排泄 / 可視化 |
研究概要 |
現時点では、細胞内外の濃度差のために薬物等の細胞外排出型トランスポーター(輸送体)への影響を、血中薬物濃度を基準に予測をすることは困難である。そこで、生細胞を用いることにより、細胞外濃度から排出型輸送体への影響を見積もる方法を提案することを目的に、研究を実施すること提案した。平成23年度内に、(1)安定に輸送体を発現する培養細胞系の樹立、(2)蛍光可視化による定量化法の樹立、(3)CDFを用いた本手法によるMRP2輸送活性測定法の評価、(4)新規蛍光プローブの探索、の4つを提案した。本年度は、これまでの報告に従いサンドイッチ培養されたラット肝細胞(SCRH)において、胆管腔に蓄積するCDFを蛍光顕微鏡(BZ-9000,Keyence)下で経時的に定量化する方法(Quantitative Time-lapse Imaging, QTLI法)を確立し、(1)MRP2機能欠損ラットにおいてCDF輸送消失すること、(2)CDF蓄積量変化がMRP2対する阻害効果を定量的に反映することを明らかにし、QTLI法が細胞外薬物濃度を基準とした排泄型薬物輸送体の機能評価に有用であることを報告した(Nakanishi, et al, DMD、39;984-991)。本手法を用いることにより、これまでの煩雑な分析操作を行わずに,細胞(生体)内の微小環境における輸送体と薬物の相互作用を高い精度と確度で見積もることが出来ることが示唆された。本成果は、細胞内濃度を測定せずに薬物排泄型輸送体機能評価および輸送体上での薬物間相互作用予測を可能にする評価系の構築の基盤となる重要な研究結果である。平成23年度の研究実施計画を照らし合わせても、本研究の目的に合致した有意義な成果といえる。今後、本手法の薬物誘導性肝障害予測への応用が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者らは、平成23年度内に(1)安定に輸送体を発現する培養細胞系の樹立、(2)蛍光可視化による定量化法の樹立、(3)CDFを用いた本手法によるMRP2輸送活性測定法の評価、(4)新規蛍光プローブの探索、の4つを提案した。本年度には、上述したようにサンドイッチ培養されたラット肝細胞において、MRP2の安定的な発現を確認し、MRP2に特異的な蛍光プローブ(CDF)を用いることによりその機能を定量的にかつ簡便に評価しうる手法QTLI法を確立した。さらに、昨年度からMRP2と同様に薬物誘導性肝障害の原因輸送体であるBSEPにも着目し研究を開始した。BSEPについては、特異的な蛍光プローブが入手出来ないため、新規に合成し、QTLI法においてそれらが利用可能であること確認した。しかし、胆管腔への移行に関与する輸送体の詳細については不明であるため現在検討中である。この様な点を考慮しても、平成23年度に掲げた到達目標を十分に達成したと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度については、基本的には計画書に記載されたとおりに研究を実施する。具体的には、(1)BSEP、BCRP、MDR1に対応する蛍光基質探索策を推進する。特に、現在検討中であるBSEPについて鋭意推進する体制を取る。(2)MRP2については、既に報告のある相互作用を引き起こす医薬品等を用いて、QTLI法での薬物間相互作用の評価とin vivoでの相互作用の予測性について確認し、本手法の妥当性および汎用性を高める。特に計画の変更については予定していない。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度については、特に計画の変更はなく、申請書に記載した予算に基づき研究費を執行する。
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