研究課題/領域番号 |
23659077
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
寺田 智祐 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (10324641)
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研究分担者 |
安藤 朗 滋賀医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90252395)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 薬学 / 薬剤反応性 / 薬理学 / 薬物トランスポータ / 炎症性腸疾患 |
研究概要 |
炎症性腸疾患(IBD)は、疾患関連遺伝子の異常と食事や腸内細菌などの環境因子が相まって引き起こされる難治性の疾患である。最近、IBDの病因として、通常小腸にのみ発現するペプチドトランスポータPEPT1が大腸にも発現し、大腸菌由来の炎症性小分子ペプチドを輸送することによって、消化管の炎症に関与することが報告されてきた。本研究では、 IBD治療薬として繁用されている5-アミノサリチル酸のアミノ酸誘導体を合成し、大腸に発現するPEPT1の薬物トランスポータとしての特性を逆に利用することによって、薬物送達への応用が可能になるのではないかと考え研究を実行した。 まず、IBD患者の大腸の組織切片を用いて、PEPT1の発現について調べたところ、正常大腸ではほとんどPEPT1は発現していないが、炎症部でPEPT1の発現が惹起されていることが確認できた。さらに、PEPT1の腸特異的な発現をもたらしているCdx2の発現も、炎症に伴い増加していることが判明した。次に、5-アミノサリチル酸のアミノ酸誘導体を合成するため、修飾アミノ酸の選定を試みた。これまでの実験データ文献情報を基に、修飾するアミノ酸をGly, Val, Tyr, Glu, Lysとした。さらに修飾部位としては、5-アミノサリチル酸のアミノ基とカルボキシル基を選択し、合計10種類の誘導体を作成した。各合成品について、NMR、IR、HPLCの手法を用いて純度などを確認したところ、全て合成できていることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに5-アミノサリチル酸のアミノ酸誘導体を、合計10種類合成することができた。本来であれば、培養細胞を用いて、合成した誘導体とPEPT1との相互作用について検討する予定であったが、合成に予想外に時間がかかったため、まだ相互作用については検討できていないため。
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今後の研究の推進方策 |
合成した5-アミノサリチル酸のアミノ酸誘導体のPEPT1による輸送特性を調べ、PEPT1によって最も輸送されやすい誘導体を選定する。デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)やトリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)投与により作成した大腸炎モデル動物を用いて、選定されたアミノ酸誘導体のin vivoにおける効果について検討する。またあわせて、in vivo薬物動態解析も実施し、吸収率、生体内半減期、親化合物への変換率など、基本的なパラメータを算出する。これらの実験に加えて、製剤設計に必要な情報もあわせて収集する。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記研究計画を実行するために、物品費として100万円を計上する。また、新知見等資料収集並びに研究成果発表のため、旅費20万円を計上する。さらに、論文投稿料、英文校正料のため、その他20万円を計上する。
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