研究課題/領域番号 |
23659079
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中川 晋作 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (70207728)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | マイクロニードル / ワクチン / 経皮デリバリー / DNAワクチン / 感染症 / インフルエンザ |
研究概要 |
マイクロニードル(MH)を応用したインフルエンザHA経皮ワクチンにより抗原特異的抗体産生が誘導されるかを検討した。その結果MHを用いて経皮免疫した群では、各HAに対する特異的なIgG抗体を誘導可能であり、その抗体価はアジュバントを併用していないにも関わらず、アジュバントを併用した注射免疫群及び経鼻免疫群の抗体価と同等以上であった。また、最終免疫から16週後においても高い抗体価を維持しており、MHを応用した経皮ワクチンにより長期的な免疫を獲得できることが明らかとなった。また産生されたHA特異的IgG抗体のサブクラス解析を行ったところ、経皮免疫群、注射免疫群および経鼻免疫群においてTh1型のIgG2aよりもTh2型のIgG1の抗体価が若干高いものの、それぞれの抗体産生は同程度であり、Th1/Th2バランスに差は認められなかった。また鼻腔洗浄液並びに糞便抽出液中の抗原特異的IgA抗体価は、経鼻免疫群に比べて経皮免疫群では高くなく、残念ながら粘膜免疫誘導レベルは低いことも判明した。 MHを応用したDNAワクチンの可能性についてニワトリ卵白アルブミン(OVA)発現プラスミドを用いて検討した。その結果、経皮免疫群において抗原特異的抗体産生が認められ、MHがDNAワクチンデバイスとしても有用であることが判明した。また抗原特異的IgG抗体のサブクラス解析を行ったところ、Th1型のIgG2cは検出されたがTh2型のIgG1は検出されなかった事から、MHを用いたDNAワクチンでは、Th1優位な免疫反応が誘導されていることが示唆された。 MHの安全性を皮膚のDraize試験及び電気抵抗値を指標に評価したところ、軽度の皮膚刺激性並びに皮膚のバリア機能の低下が認められたが、各々48及び2時間後には元の状態にまで回復したことから、安全性に大きな問題が無いことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度検討予定であった項目については、おおむね完了しており、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、生分解性マイクロニードル(MH)を応用した経皮免疫製剤について、実験動物を用いた安全性および有効性の検証を行う。抗原としては、免疫学的解析法が充実しているニワトリ卵白アルブミン(OVA)を選択し、その発現プラスミドを、また粒子状抗原としては臨床で使用されているインフルエンザHA抗原を選択し、それらを封入した生分解性マイクロニードルを作製する。それらマイクロニードルを用いて実験動物に免疫し、皮膚刺激性試験、皮膚の病理組織検査、抗原特異的な抗体産生および細胞傷害性T細胞誘導活性、免疫誘導機序解析などを行い、経皮ワクチン製剤としての可能性を有効性と安全性の面から検証する。次年度は、インフルエンザHA抗原について、その発現プラスミドについても免疫誘導特性を評価する。また、免疫動物に対してはインフルエンザ感染阻止実験を行い、MHの有用性を感染防御の面からも評価する予定である。また、蛍光標識抗原を含有するマイクロニードル型経皮免疫製剤を貼付後の皮膚組織ならびに所属リンパ節を回収し、経時的な抗原の局在変化を組織学的に解析する。また、各組織の凍結切片標本を免疫組織染色することで、抗原の体内動態に寄与する免疫細胞サブセットを同定するための基礎検討を行う。さらに、貼付部位の皮膚におけるサイトカイン産生プロファイルを検討する。これらの結果から、マイクロニードル型経皮免疫製剤による免疫応答誘導機序を探る。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品費:生分解性マイクロニードルを用いた経皮ワクチンの有効性と安全性の検証においては、基本的に動物実験が中心であり、マウス150匹、ラット50匹の購入費として40万円を計上した。また、ELISA用器具・試薬として6万円、免疫誘導機序の解析に必要な蛍光免疫染色用抗体および各種染色試薬の購入費として6万円、その他一般試薬 (培養器具、培養液、DNA調整試薬など) の購入費として3万円が必要である。旅費:研究成果発表、情報収集のための国内旅費として、本年度の実績から20万円を計上した。その他:本研究成果をまとめた論文の国際学術雑誌への投稿に係る費用として15万円を計上した。
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