研究課題/領域番号 |
23659079
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中川 晋作 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (70207728)
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キーワード | マイクロニードル / ワクチン / 経皮デリバリー / DNAワクチン / 感染症 / インフルエンザ |
研究概要 |
本研究は、生分解性マイクロニードル(MH)をプラスミドDNA及びインフルエンザHA等の粒子状抗原に対しても適応可能な万能型経皮ワクチンデリバリーデバイスとして開発する事を目的としている。まずDNAワクチンデバイスとしての可能性について検討した結果、インフルエンザHA抗原発現プラスミド(pDNA-HA)装填MHを用いた経皮ワクチンでは、抗原特異的IgM抗体価の上昇が確認されたがIgG抗体の産生は、ほとんど認められなかった。またHA特異的CD8陽性T細胞についてもpDNA-HA筋肉内注射ワクチン群と比較して顕著な誘導は認められなかった。これらのワクチンでは、皮膚刺激性等において重篤な副反応は認められなかったが、プラスミドDNA装填MHは一次免疫応答を誘導できるが、細胞性免疫や液性免疫を強く誘導することが現在の条件下では困難である事が明らかとなった。今後、MHに装填可能なプラスミドDNA量を増やす工夫、ならびにプラスミドDNAの細胞内取り込み効率を上げる為のキャリアーやアジュバントの利用等を試みる予定である。 一方、粒子状抗原としてインフルエンザHA抗原を装填したMHを用いて経皮ワクチンした研究では、注射ワクチン群と比較して高い抗原特異的抗体産生が認められた。この経皮ワクチン群にインフルエンザウイルスを経鼻的に接種し感染防御能を評価した。プラセボ群では、ウイルス接種後顕著な体重減少、一般症状の悪化が観察されたが、経皮ワクチン群では、その程度は軽微であった。また肺におけるウイルス量を測定したところ、経皮ワクチン群では肺中にウイルスが検出されず、プラセボ群と比較して有意にウイルスの増殖を抑制できた。 以上MHはDNAワクチン用デバイスとして利用する場合、改良する必要があるが、インフルエンザHA抗原を用いたワクチンとしては、安全性、有効性に優れている事を明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MHを経皮DNAワクチンデバイスとして利用する研究については、当初予定していた実験項目については全て検討を行ったが、結果としてMHによって皮膚内に送達出来るplasmid DNA量では、十分な免疫応答を誘導することが困難であることが判明した。その為、免疫応答が誘導されている場合に検討する項目については、残念ながら実施することが出来なかった。 一方、粒子状抗原(インフルエンザHA抗原)を用いた研究については、MHに封入した微量の抗原で十分な免疫応答を誘導することが可能であり、注射型ワクチンと比較して安全性、有効性の面において同等或いはそれ以上である事を明らかにし、当初予想していた以上の成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
MHを用いたDNAワクチンについては、十分な免疫応答を誘導することが出来なかったが、今回の検討では、アジュバントを全く使用していない。従って、経皮ワクチンに適したアジュバントを併用すればplasmid DNAを用いたDNAワクチンについても効果を得られる可能性がある。しかし、現在のところ経皮ワクチン用のアジュバントについては、十分な情報が無いのが現状である。そこで今後は、経皮ワクチン用のアジュバント探索を行い、有効かつ安全な経皮ワクチンシステムを構築していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度にMHのDNAワクチンデバイスとしての有用性を評価し、その成果を平成25年3月末に開催された日本薬学会で発表すると共に論文投稿する予定であった。しかし残念ながらそれらの成果は、日本薬学会での演題登録締め切り日を過ぎてから得られた為、発表することが出来なかった。従って、平成25年度に繰り越した予算については、平成24年度に得られた成果の学会発表並びに論文投稿に必要な予算として使用する。
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