研究課題/領域番号 |
23659081
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
高野 幹久 広島大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 教授 (20211336)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | トランスポーター / 低温忍容性 / 汎トランスポーター阻害剤 / 赤血球膜小胞 / 腎刷子縁膜小胞 / GLUT / ENT / MCT |
研究概要 |
現行の実験手法から考えて、氷冷下でも機能するトランスポーターが存在した場合には、適切なトランスポート実験が行えない可能性がある。本研究では、このような問題点を克服するために、各種トランスポーターの低温忍容性(氷冷下で機能するかどうかの性質)を解析した上で、低温忍容性を示す全てのトランスポーター機能を停止させる汎トランスポーター阻害剤の探索・開発を目指すことを目的としている。本年度は主にトランスポーターの低温忍容性について検討した。1)ヒト赤血球膜小胞におけるD-glucose輸送は氷冷下(ICT)でも起こることを認めている。そこでグルコーストランスポーターGLUT1のもう一つの基質である3-O-methyl-D-glucoseを用い同様の検討を行ったところICTでも輸送が見られた。従って、赤血球膜のGLUT1は基質の如何によらず低温忍容性を示すことが示唆された。2)gamma-hydroxybutylic acid(GHB)を基質として用い、ヒト赤血球における氷冷下でのプロトン共役型モノカルボン酸トランスポーターMCT1の機能について検討したところ、GHBの取り込みは氷冷下でもpH依存性および阻害剤感受性を示し、赤血球の二次性能動輸送体も低温忍容性を示す可能性が示唆された。3)ラット赤血球あるいは赤血球膜小胞において、ヒト赤血球と同様、uridine(ENT介在性)およびD-glucose(GLUT介在性)のICT下での輸送が観察された。4)ラット腎刷子縁膜小胞におけるL-alanineおよびD-glucose輸送に低温忍容性が認められ、Na勾配存在下では若干のovershoot現象も認められた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト赤血球膜のGLUTの低温忍容性について他の基質を用いデータを強化するとともに、赤血球に存在する二次性能動輸送体であるプロトン共役型モノカルボン酸トランスポーターMCT1についても氷冷下で機能する可能性を示すことができた。さらにラット赤血球膜のENTやGLUT、ラット腎刷子縁膜の二次性能動輸送(L-alanineおよびD-glucose輸送)についても低温忍容性が認められることを明らかにした。しかし、検討すべきトランスポーターが多く、当初想定していたトランスポーター全てを検討することはできなかった。一方、汎トランスポーター阻害剤の研究に着手し、架橋試薬(formaldehyde, glutaraldehyde)が、ある程度の阻害効果を示すことを見出した。
|
今後の研究の推進方策 |
トランスポーターの低温忍容性については、当初の予定に従って、対象とするトランスポーターを拡充し検討を続ける。また培養細胞系を用いた検討についても着手する。汎トランスポーター阻害剤については、個々の候補化合物の濃度等を最適化するとともに、複数の化合物の組み合わせによる効果増強についても検討を開始する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
用いる実験系の一つとして、ラット小腸刷子縁膜小胞の調製を何度も試みたが、参考文献に記載の調製法ではうまくいかず時間を取られた。次年度はヒトおよびラット赤血球、赤血球膜小胞に加えて、株化培養細胞も用い、研究推進を図る。経費は、主に、実験動物、輸送基質(RI標識体など)、汎トランスポーター阻害剤、培養細胞関連試薬・器具などの購入に充てる。
|