研究課題/領域番号 |
23659083
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
家入 一郎 九州大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (60253473)
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研究分担者 |
廣田 豪 九州大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (80423573)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | MDR1 / コヒーシンモデル |
研究概要 |
3C assayによるDNA高次構造解析に先立ち、ヒト肝臓におけるABCB1遺伝子発現量の定量を行った。Real-time PCRによりPfaffl 法を用いた(内標は GAPDH)。3C assayはforward primerをDMR 領域(CYP3A4遺伝子5 Mb 下流域 = MDR1遺伝子7 Mb 上流域)にreverse primerをMDR1遺伝子(転写開始点を含んだ領域)に設定した。3C ライブラリーはヒト肝臓に対して、ホルムアルデヒド処理を行った後、Bgl IIによる制限酵素処理、ライゲーション、架橋乖離反応、DNA精製の手順で行った。gene desertにはchromosome 16 に存在する領域を選択し⊿⊿Ct 法にて値を補正した。測定の結果、MDR1発現量の高いヒト肝臓検体では、interaction frequencyは検出されず、発現量の低い検体では高いinteraction frequency(1.02 ± 0.26)を示した。interaction frequencyの上昇はプライマーを作成した領域間の空間的な近接を示唆している。このことから、MDR1遺伝子・DMR領域の近接とMDR1の発現抑制が関連している可能性が示唆された。また、interaction frequencyが測定できなかった検体は別の領域においてfrequencyが測定できていたことから、ライブラリーの作成には問題はないことを確認してある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では2年間で以下の4項目を達成することとなっている。1.3Cライブラリーの作成, 2.enhancer領域の探索, 3.luciferase assay, 4.多型探索、メチル化、アセチル化解析1.にて作成したライブラリーを用いた3C assayにより発現制御領域の候補としてDMR領域が見いだされ2.を達成した。1.と2.の終了により全計画のおおよそ半分は達成した。今後は残りの項目(3.と4.)に取り組むことでDMR領域がMDR1遺伝子発現制御を行う詳細なメカニズムを明らかにすることが出来ると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究を行う以前我々は、DMR領域がMDR1遺伝子の転写活性化に寄与することを想定していた。研究実績の概要の項目で記述したように得られた結果はDMR領域の近接は発現の抑制を示唆するものであった。このことからDMR領域がenhancerとして機能するのではなく、近接することによりむしろ他の転写促進因子を立体的に阻害している可能性が考えられる。DMR領域のMDR1遺伝子への近接が遺伝子発現に影響を与えるメカニズムを解明するためには、関連する転写因子群の同定やその結合状態、立体構造への影響等を総合的に解析する必要があると考えられる。当初の研究計画であるluciferase assay、多型探索、メチル化・アセチル化解析に加えDMR領域に関連したChip assayを行っていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
設備備品費は当初から計上しておらず次年度においても予定はないことから、研究費は主に消耗品費に充当される計画である。消耗品の使途は主に以下の品目を予定している。dual luciferase assay system (Promega社):luciferase assaySSCP用ゲルGeneGel Excel (GE社):多型探索DNA抽出キットDNeasy plus Kit (QIAGEN社):Chip assay各種免疫沈降用抗体:Chip assay
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