研究課題/領域番号 |
23659086
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研究機関 | 昭和薬科大学 |
研究代表者 |
小泉 直也 昭和薬科大学, 薬学部, 助教 (80433845)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 粘膜ワクチン |
研究概要 |
初年度においては、アデノウイルスカプシドタンパク質由来の自然免疫誘導分子の自然免疫誘導メカニズムについて、マクロファージ細胞および樹状細胞を用いた検討をおこなった。その結果、両細胞においてIL-6の産生が確認され、種々の自然免疫誘導シグナルのアダプター分子をノックアウトした細胞における検討を行った。アデノウイルスカプシドタンパク質由来の自然免疫誘導分子の受容体は現在のところ不明であり、引き続き検討が必要である。一方、実験動物を用いた粘膜組織への投与による免疫誘導能を検討したところ、十分な免疫誘導能が現在までに確認されていない。そこで、投与量の増量および経鼻投与システムの最適化を行い、粘膜組織における効率的な免疫誘導方法を検討中である。一方、アデノウイルスカプシドタンパク質由来の自然免疫誘導分子は、胃および腸液モデル中においても、特定の細胞表面分子との結合性が保たれること、および高分子化合物を細胞内に輸送する機能を持つことを確認した。これら検討により、経口投与ワクチン製剤の開発に必要な酸・アルカリ条件下での安定性が確保された。また、アデノウイルスカプシドタンパク質由来の自然免疫誘導分子とモデル抗原である卵白アルブミンとの融合タンパク質の作製方が確立され、LPSとの同時投与ではあるが、実験動物の腹腔内投与により卵白アルブミンに対する特異的なIgGが検出された。これらの検討結果は、当初研究計画の予想内の成果であり、研究実施計画の予定に沿って研究がすすめられている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までのところ、アデノウイルスカプシドタンパク質由来の自然免疫誘導分子の自然免疫誘導メカニズムについては解明に至っていない。しかしながら、各種自然免疫誘導シグナルのアダプター分子をノックアウトした細胞における検討を行っており、シグナル伝達の概要解明は時間の問題である。一方、実験動物を用いた検討を前倒しして行っており、マウス上気道および腸管等の粘膜面への抗原およびアデノウイルスカプシドタンパク質由来の自然免疫誘導分子を投与し、抗原特異的な血清中抗体価の測定を行っており、予備的なデータの獲得にも成功している。今後は、粘膜組織への投与方法の最適化および作製した融合タンパク質を用いた検討により経口投与ワクチン製剤の開発研究に取り組むことが可能である。
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今後の研究の推進方策 |
アデノウイルスカプシドタンパク質由来の自然免疫誘導分子の自然免疫誘導メカニズムについて現在検討中である。近年のワクチン開発においては、アジュバンド機能のメカニズムにより獲得免疫誘導能が予測可能なため、本検討は引き続き詳細を明らかとすべく継続する。また、次年度の研究計画にあるように、直腸投与および胃直接投与によるアジュバンド効果の検討をおこなうため、本年度行ってきた経鼻投与による免疫誘導能の評価を参考に検討を勧めていく。また、作製済みの卵白アルブミン融合タンパク質を用いて、経口投与型ワクチン製剤としての有用性評価を行うこととする。製剤設計に関しては、アデノウイルスカプシドタンパク質由来の自然免疫誘導分子と卵白アルブミンとの融合タンパク質を単独投与するだけでなく、消化管粘膜組織への付着性や移行能を向上させるため、脂溶性物質の同時投与や、ミセル製剤としての経口投与方法などについても検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
アデノウイルスカプシドタンパク質由来の自然免疫誘導分子の自然免疫誘導メカニズムの解明および直腸投与および胃直接投与によるアジュバンド効果の検討に関しては、サイトカインのELISAキットおよび卵白アルブミンに対する特異的抗体産生量を測定するためのキットが、研究費として使用予定である。また、当然ながら実験動物を用いた検討を行うため、実験動物の費用および動物管理費用が計上される予定である。また、卵白アルブミン融合タンパク質の経口投与型ワクチン製剤としての有用性評価においては、粘膜組織切片を用いた免疫染色を行う必要があり、各種免疫細胞のマーカー分子に対する抗体を購入するため、1次抗体および蛍光標識2次抗体に関しても購入が必要である。その他、培養細胞用消耗品や組み換えタンパク質作製用の大腸菌培養用消耗品およびタンパク精製試薬等が実験遂行には必須であり、節約に努めつつ、効率的な予算の執行を引き続き心がける。
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