研究概要 |
昨年度、アストロサイト局在H2S感受性分子を研究中に、H2Sからpolysulfidesが生成し、脳内に約20 microM存在し、TRPA1チャネルを活性化することを発見し、FASEB J 27, 2451-2457, 2013に報告した。このpolysulfidesについてKeap1・Nrf2系制御について明治薬科大との共同研究を進めた。2012年に他のグループからH2SがKeap1を過硫化することによって、Nrf2が核内移行し、抗酸化関連遺伝子のupregulationされることが報告された。ただ、H2SとKeap1のシステイン残基の酸化数が同じであるため、反応は起りえないという矛盾を抱えていた。これに対して、polysulfidesでは酸化数が0で理論的にも無理はない。本研究において、polysulfidesによって、Keap1が過硫化され、抗酸化遺伝子のupregulationが起り、神経保護作用を示すことがあきらかとなった(FEBS Lett. 587, 3548-3555, 2013)。本年度はまた、polysulfides生成過程、3-mercaptopyruvate sulfurtransferase (3MST)ノックアウトマウスのコロニーを確立し、解析を始めた。D-cysteine からのH2S合成経路、D-amino acid oxidase (DAO)/3-mercaptopyruvate sulfurtransferase (3MST)は小脳と腎臓に局在しており、、D-cysteine経口投与により、腎臓虚血再還流障害をL-cysteineより効率良く抑制し、腎障害治療法開発につながる成果で、Nature Communications 2371, 2013に発表し、治療応用に向けて研究を進めている。最終年度にあたり、2つの総説にまとめた (Neurochem. Int. 63, 492-497, 2013; Antioxid. Redox Signal. 20, 783-793, 2014)。
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