1 連携研究者とともに、深麻酔下のマウスでフラビン蛍光差分イメージングをおこない、視覚刺激の「スピードアップ」変化に反応する大脳皮質二次視覚野を経頭蓋的に描出した。同時に脳表面の血管も経頭蓋的に撮影し、イメージングで描出された二次視覚野と重ね合わせ、実際の脳における二次視覚野の位置を頭蓋骨上にマークした。マウスは脳定位固定装置上に固定されているので、そのマークの平面座標を決定することができた。 2 マーク付近の頭蓋骨を開放して脳を露出し、1で決定した座標に、ハミルトンシリンジの針先に付けられたガラス電極を刺入し、神経トレーサー(10%ビオチン化デキストランアミン)を微量注入した。1週間の生存期間の後、還流固定し、脳を取り出した。脳の連続横断切片を作製し、トレーサーの可視化反応をおこない、トレーサー注入部、およびトレーサーが神経細胞に取り込まれて運ばれていった領域を確認した。トレーサー注入が限局的で、トレーサーが運ばれた領域が鮮明に観察できる条件を検討した。(ここまでが平成23年度) 3 最終年度においては、ハミルトンシリンジの替わりに、ピコスプライザーを用い、より限局的なトレーサー注入を試みた。ガラス電極の先端の口径30μmで、ガス噴射0.3秒間程度で適量注入されることがわかった。しかしながら、ガス圧の調整や実際の注入量の確認が難しかった。 4 最終年度においてはさらに、視覚刺激の「形状変化」に反応する大脳皮質の小領域を、二次視覚野の外側内側領域のさらに外側に見出し、“外側中間領域”であることを確認した。この“外側中間領域”に、上記の方法でトレーサーを注入し、視床の膝上核と線維連絡があることを同定した。この膝上核が視覚刺激の「形状変化」に関する情報処理をおこなう場所であることが初めて示唆された。
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