研究課題/領域番号 |
23659092
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
佐藤 真 福井大学, 医学部, 教授 (10222019)
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研究分担者 |
黒田 一樹 福井大学, 医学部, 助教 (60557966)
駒田 致和 福井大学, 医学部, 特命助教 (90523994)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 解剖学 / 細胞・組織 / 神経科学 / 脳・神経 / 分化 |
研究概要 |
本研究は「グルタミン酸作動性ニューロンを、脳内でGABA作動性ニューロンに再分化させるプロトコールを開発することを目指す」挑戦的研究である。とくに本年度は、次の(1)、(2)について重点的に研究を進めた。(1)グルタミン酸作動性ニューロンをGABA作動性に変化させると報告されているPtf1aにより作製したGABA作動性ニューロンの性質の解析を進める実験を実施した。具体的にはPtf1aをE14.5で大脳皮質に導入し、E18.5で解析を行った。その結果、Ptf1aを導入した細胞は抑制性神経細胞の示す接線方向へ移動する事が示された。同時に、上記サンプルについてスライス切片を作製し、タイムラプスにより観察を行った結果、Ptf1aを導入した細胞は接線方向へ移動する事が確かめられた。(2)本来、大脳皮質(もしくはganglionic eminence)に発現する転写因子を、形成期大脳皮質脳室帯に発現させ、グルタミン酸作動性ニューロンからGABA作動性ニューロンへの転換を図る実験の基礎実験として、Ptf1aにより興奮性神経細胞が抑制性神経細胞に変化するかをGAD67-EGFPマウスやvGAT-Venusマウスを用いて解析を行った。しかしながら、予想に反しPtf1aを胎児の大脳皮質に導入してもGAD67やvGATの発現は見られなかった。(3)上記の結果を受け、Ptf1aを導入した細胞をセルソーターで回収し、RNAを抽出後にマイクロアレー解析を行っている。現在、その結果を解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Ptfa1の細胞移動に対する働きは予想通りのものであり、この活性を確認できたことは、まず研究の前提が確認できた点で評価できる。同時に、GAD67-EGFPマウスやvGAT-Venusマウスを用いてGABA細胞への変化について詳細な検討ができた点は、得られた成果は想定とは異なるものであったが、しっかりした基盤のもとに研究を遂行できる点で評価できる。さらに、これらの成果は、一見切り離せないと考えられていた細胞移動の移動様式と神経細胞のフェノタイプが切り分けられることを示しており、大変興味深いもので、この成果を受け、具体的な分子機構の解明を進めている点は、萌芽的研究の観点からはその目的を達成していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
上記マイクロアレー解析をさらに進め、接線方向への細胞移動を可能とする分子群の同定に努めるとともに、GABA細胞としてのフェノタイプ確立に必要な分子機構の解明を進める。また、この結果を受け、平成23年度はiN細胞への遺伝子導入実験や成体脳への遺伝子導入を実施しない方向で研究内容が変化した。それゆえ、研究費残額が生じた。
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次年度の研究費の使用計画 |
23年度の研究費残額は、上述の新たな分子検索により得られた分子の機能アッセイに同様の実験を行うことが不可欠ゆえ、いずれにせよ使用を予定しており、平成24年度において、さらなる成果をうるべく実験を実施する。加えて、新たな分子について、成体脳およびiN細胞を用いてその機能(活性)の検討を進める。
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