研究課題/領域番号 |
23659093
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
大野 伸一 山梨大学, 医学工学総合研究部, 教授 (50109170)
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研究分担者 |
寺田 信生 山梨大学, 医学工学総合研究部, 医学研究員 (60293461)
齊藤 成 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (10456444)
齊藤 百合花 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (00530099)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 生体内凍結技法 / 流動赤血球機能的形態像 / 膜関連蛋白 |
研究概要 |
(1)新たに開発した生体凍結装置のイソペンタン・プロパン混合寒剤液(-193℃)貯蔵タンクと液体窒素貯蔵タンク(-196℃)から、液体窒素冷却メス刃で肝臓と腎臓を切り込むと同時に、フットスイッチを踏むことにより、その混合寒剤液(-193℃)をノズル先端より流出させて、麻酔下動物(マウス)臓器を容易に凍結できることが明らかとなった。その後、凍結臓器は液体窒素中で保存する。(2)そこで、ネンブタール麻酔下マウスの肝臓と腎臓を、冷却メス刃で凍結切断と同時にイソペンタン・プロパン混合寒剤で、同様に生体内凍結して、凍結割断装置FD-3AS用ホルダーに凍結切断面を上にして固定した。さらに組織試料表面を冷却メス刃(液体窒素温度-196℃)で凍結割断を加えて、ディープエッチング(-95℃、10-7Torr、10~20分)により、氷を昇華させて、白金の回転蒸着(2nm)により、レプリカ膜を作製した。各臓器血管内流動赤血球は、長軸方向に伸展して、凍結割断した赤血球膜内粒子が、直線的に配列していた。これらの膜内粒子は、主にバンド3蛋白抗体により免疫染色された。また、赤血球膜裏面には、スペクトリンの網状構造も確認できた。(3)生体内凍結-凍結置換固定試料(約-80℃に冷却したパラフォルムアルデヒド化学固定剤含有アセトン中)の低温樹脂包埋切片では、バンド4.1蛋白およびスペクトリン蛋白は赤血球膜直下に局在し、バンド3蛋白は、赤血球膜上にみられた。以上のように、麻酔下マウス生体内臓器血管内の流動赤血球の機能形態学的特徴を解析できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は、研究代表者が、長年(約30年)に渡って行ってきた急速凍結・ディープエッチングレプリカ法を生体内流動赤血球の機能形態学的解析に応用したものである。生きた動物臓器組織を、通常の虚血と酸欠状態を引き起こす試料切除をすることなく、生体内凍結した組織から、電顕レプリカ膜を作製して解析した。現時点では、膜内粒子の同定や赤血球膜裏打ち構造が確認できて、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の生体内凍結赤血球試料のレプリカ膜および超薄切片上の透過型電顕的検討に加えて、走査型電顕法と共焦点レーザー顕微鏡による検討を行なう。(1)走査型電顕法での検討:i)組織を平成23年度と同様に生体内凍結する。ii)凍結組織を摘出し、-80℃に冷却した四酸化オスミウム含有アセトン中で、凍結置換固定をする。iii)温度を徐々に上昇させた後、t-ブチルアルコールに入れて凍結乾燥する。白金パラジウムをイオンスパッターでコーティングして走査型電顕で検索する。iv)一部の生体内凍結試料は、エッチングを行ない、金蒸着(5nm)後、低加速電圧走査型電顕で観察する。(2)凍結切片による多重免疫染色法:生体内凍結後、各臓器内流動赤血球を凍結置換固定して、凍結切片作製を行ない、スペクトリン、バンド3、バンド4.1、グリコフォリン等の抗体で多重免疫染色し、現有設備ライカ共焦点レーザー顕微鏡で観察する。なお、平成24年度の上記研究に必要な物品費は、すべて消耗品類の購入に使用する予定である。さらに平成25年度は、正常血行動態以外の生体内血流変化による赤血球の形態学的検討をする:薬剤投与や心停止などにより、各種臓器内血流動態を変化させ、上記同様の方法で流動赤血球形態像を検索する。以上により、生体内微小環境が赤血球の機能形態に与える因子を解析できる。なお、平成25年度の上記研究に必要な物品費も、すべて消耗品類の購入に使用する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、主に流動赤血球膜関連蛋白の免疫組織化学的解析のために、実験動物、液体窒素、化学固定剤、包埋剤および各膜骨格関連蛋白抗体を購入する予定である。
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