研究課題
本研究の目的は、発生期肝臓を構成する組織 (肝上皮、血管内皮、肝中皮)の3次元空間における位置関係と挙動を正確に記録するために、それぞれの組織を異なった蛍光タンパクで標識したライブイメージングマウスを作成することである。 この目的を実行するために以下の手順で研究を遂行する予定であった。(1) これら3種類の胚組織で発現する遺伝子群(E-cadherin またはAlbumin, Flk-1, Wt1)のBAC cloneに3種類の異なった蛍光タンパク遺伝子(Venus, turboRFP, Sirius)をin-frameでノックインする。 (2) これら改変型BACsを マウスES細胞またはヒトiPS細胞上のヒト型人工染色体HACに搭載する。 (3) 3BAC-HAC搭載マウスES細胞をマウス胚盤胞胚に移植し、キメラ作製後交配により個体を得る。 (4) 3BAC-HAC マウス胚肝臓を実体蛍光顕微鏡を用いて観察し3種類の組織の空間的位置関係を記録する。 平成23年度は、4種類のBAC をCHORIより購入しこれらのクローンが正しいクローンであることを確認した。また3種類の蛍光タンパクを各BACへノックインするためのtargeting vectorの構築を行い、pBS-CreERT2-neo2を骨格とした pBS-Venus-neo2, pBS-turboRFP-neo2, pBS-Sirius-neo2を完成させた。 これらのtargeting vectorは BACの制御領域によってVENUS (高輝度黄色)、turboRFP (高輝度赤色), SIRIUS (高輝度群青色)を発現することができる。したがって、転写活性が低いBAC含有発現細胞であっても蛍光タンパクを十分に検出できることが期待できる。
3: やや遅れている
研究計画が遅れた理由は、以下に示す4点があげられる。(1) 雇用していた実験補助員が年度半ばで休職しそのかわりとなる補助員の養成に6ヶ月がかかったこと。(2) 遺伝子工学に必須な解析ソフトウェア (Vector NTI Advanced 11.5)がきちんと機能せず、Invitrogenの対応の遅れによりその回復に4ヶ月かかったこと。(3) 申請者本人がBACクローンの扱い (BAC DNAの抽出、制限酵素マッピング)に習熟しておらず、実験補助員の代替を直ちにおこなうことができなかったこと。(4) targeting vectorをBACへ組込むために当初使用していたRed/ET systemがうまく機能せず、代替法としてのRecombineering法の導入に時間がかかったこと。
研究の推進方策として、より効率的な研究資源の運用を行う。具体的には以下の3点について改善を行う。(1) スケジューリングの改善: 研究補助員は主にパートタイマーであり、一日のうちで実際に実験ができる時間帯は限られている。そこで週はじめに一週間分の予定表を作成し無駄な時間が生じないように工夫する。 (2) プロトコルの改善: 練度があまり高くない実験補助員を雇用して実験を遂行するには、自分用の簡略化したプロトコルでは不十分でありミスを誘発する。そこで、低練度の実験者でも確実に実験が遂行できるように、その水準にあったプロトコルを作成する。(3) 培地の備蓄量の増大: 遺伝子工学を予定通り遂行するためには、大腸菌培養用の培地等を常にあらかじめ準備しておく必要がある。これまでもある程度は備蓄していたが予定外の実験には対応できないことが何度かあった。そこで備蓄量をこれまでの二倍にし定期的に更新することにする。
次年度 (24年度)は 以下の項目について実施するために主に消耗品と外注費として使用する。(1) Albumin-BAC, Flk1-BAC, WT1-BACのfirst ATGに pBS-Venus-neo2, pBS-turboRFP-neo2, pBS-Sirius-neo2をノックインする。(2) これら改変型BACsを マウスES細胞またはヒトiPS細胞上のヒト型人工染色体HACに搭載する。BACsのHACへの搭載は、HACを開発したクロモリサーチ社に外注する。平成23年度の未使用分はこの外注費として使用する予定である。 (3) 3BAC-HAC搭載マウスES細胞をマウス胚盤胞胚に移植し、キメラ作製後交配により個体を得る。 (4) 3BAC-HAC マウス胚肝臓を実体蛍光顕微鏡を用いて観察し3種類の組織の空間的位置関係を記録する。
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Developmental Biology
巻: 363 ページ: 15-26
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PLOS ONE
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http://www.imeg.kumamoto-u.ac.jp/divisions/pattern_formation/