研究課題/領域番号 |
23659106
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
和泉 孝志 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70232361)
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研究分担者 |
大嶋 紀安 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30360514)
岸本 幸治 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50280699)
立井 一明 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00192633)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | シグナル伝達 / 分析化学 |
研究概要 |
GPCRからSPRシグナルにいたる細胞内情報伝達経路に関して次の知見を得た。すなわち、各種GPCRを発現したCHO細胞の各々のリガンドによるSPR反応を検討し細胞画像情報と併せて解析した結果、Giに共役しているM1およびD2受容体の刺激によってSPR反応を観察したが、いずれもアクチンの重合を伴っており特に細胞付着面での細胞骨格の変化が強く観察された。これらのSPR反応及びアクチン重合のいずれもPI3K阻害剤であるwortmannin処理により著明に減弱した。さらにCHO細胞の内在性のGPCRでありG12/13に共役しているLPAやS1P受容体の刺激によってもSPRシグナルを観察しアクチン重合を認めたが、種々のRho阻害によりこれらは減弱した。これらにより、GPCR刺激からSPR反応に至る経路には低分子Gタンパク質を介した細胞骨格の変化が関与しているという仮説がより確かなものとなった。 GPCRだけでなくRTK(チロシンキナーゼ型受容体)からのSPRシグナルについても解析を進めた。CHO細胞をIGF-1(インスリン様成長因子)で刺激したところSPR反応を認めたが、これもwortmannin処理により著明に減弱した。さらに、CHO細胞をインスリンで刺激するとIGF-1よりは弱いがSPR反応を認めた。さらに、HeLa細胞をEGF(上皮細胞成長因子)で刺激したところ強いSPR反応を認めた。 新規のSPRアッセイシステムの確立を目指した研究を行った。従来のアッセイシステムは据え置き型の機器が必要であったが、感度を損なうことなく移動が可能な機器を用い、SPRプローブと流路が一体となった測定プローブの開発を進めてプロトタイプのプローブを作製し、BLT-1受容体を発現した細胞においてLTB4刺激によるSPRシグナルを観測することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GPCRからSPRシグナルにいたる細胞内情報伝達経路に関して、GiおよびG12/13からさらに低分子Gタンパク質を介した細胞骨格の変化がSPR反応に関与しているという従来の仮説を補強するいくつかの実験結果を得ることができた。 RTK(チロシンキナーゼ型受容体)からのSPRシグナルについても解析を進め、IGF-1以外にもインスリンやEGFからのSPR反応を観察した。さらに、GPCRからの場合と同様にwortmannin処理により減弱することを見出した。 新規のSPRアッセイシステムの確立を目指した研究を行い、感度を損なうことなく移動が可能な機器を用い、プロトタイプのSPRプローブを作製し、BLT-1受容体を発現した細胞においてSPRシグナルを観測することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
GPCRからSPRシグナルにいたる細胞内情報伝達経路に関して、細胞骨格の重合・脱重合阻害剤のSPRシグナルに及ぼす影響をさらに解析する。また、これらの影響と形態学的解析に得られる画像情報との関連を検討する。 RTK(チロシンキナーゼ型受容体)からのSPRシグナルにいたる細胞内情報伝達経路も解明するため、種々の阻害剤を用いて解析を進める。 新規のSPRアッセイシステムの確立を目指した研究を進め、操作が簡単な安価なSPRプローブの開発を進める。これらを用いて、受容体リガンド拮抗剤、シグナル伝達物質の阻害剤、細胞骨格系制御剤等のSPR現象に及ぼす影響を検討し、各種の薬物スクリーニングへの応用を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究に使用する主たる設備は既に保有しているため設備備品費は必要ない。従って、研究費は主として消耗品費に充てられる。その多くは、細胞培養、リコンビナントタンパク質発現のための遺伝子組換え実験などのための消耗品購入費用である。また、研究費の一部はSPRプローブの購入に充てられる。
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