研究課題/領域番号 |
23659109
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
陳 和夫 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90197640)
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研究分担者 |
戸口田 淳也 京都大学, 再生医科学研究所, 教授 (40273502)
星野 勇馬 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00378746)
佐藤 幸保 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00508236)
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キーワード | 再生医学 / 細胞・組織 / 低酸素 / 間欠的低酸素 / 持続的低酸素 |
研究概要 |
先に我々が用いた液相法による細胞実験用の低酸素曝露装置は、低酸素化に要する時間が長く、また実際に細胞を用いた場合、安定した間歇的低酸素曝露が困難であった。そのため新たに気相法による細胞実験用の低酸素曝露装置を自主開発し、実験系の条件検討を行った。これにより溶媒液体中の酸素分圧を30-80 Torrの安定した1時間に8回程度の間欠的低酸素状態、もしくは持続的低酸素状態を作り出すことが可能になった。HeLa細胞を用いた予備実験では、間欠的低酸素暴露によりNF-κBの下流に位置するTNF-αの誘導を、持続的低酸素暴露によりHypoxia inducible factor-1(HIF-1)とその下流のvascular endothelial growth factor (VEGF) の誘導を認め、既報との整合性と実験系の妥当性を確認した。 次に、睡眠時無呼吸と関連する病態の解明を目的として脂肪細胞の細胞系列である3T3-L1細胞を用いて間歇的低酸素暴露実験を試みた。しかし、この段階で実験に使用する細胞により培養液中の低酸素条件が大きく異なることが判明した。そのためTE-671細胞などを用いて実験条件を検討し、分化安定した細胞系列であれば認容範囲内で曝露条件を安定させることが可能であることを確認した。現在は、睡眠時無呼吸と関連の指摘されているリポカリン型プロスタグランジンD2合成酵素(L-PGDS)を産生する細胞系列を用いた実験を継続中である
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
HeLa細胞を用いた予備実験で、既有の装置では安定した間欠的低酸素条件を再現することが困難であると判明し、実験装置の原理から見直す必要に迫られた。そのため液相式に代わり新たに気相式の低酸素曝露装置を作成し、混合ガスを用いて安定した間欠的低酸素条件を実現した。 次に3T3-L1細胞を用いた間歇的低酸素暴露実験を試みた。3T3-L1細胞を分化誘導させて間歇的低酸素曝露実験に使用できる大きな細胞シートを安定して得られるまでに約2ヶ月を要した。しかしながら実験に3T3-L1細胞を用いると間歇的低酸素暴露により培養液中が持続的低酸素状態となり、間歇的低酸素が実現しないことが判明した。酸素条件が細胞系列により変化するためと考えられ、実験に使用する細胞系列ごとに実験条件を校正するところから始める必要性が判明した。 この過程でTE-671細胞などを用いて検討したところ、曝露条件は分化安定した細胞系列であれば認容範囲内で安定させることが可能と考えられた。一方、未分化のiPS細胞を用いる場合は条件をより厳密にするため、複数の細胞系列を用いてデータ収集中である。また、睡眠時無呼吸の関連病態について基礎的データを得ることを主目的として、すでに樹立された細胞系列を用いての実験を継続・検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
前述のように気相式実験装置は液相式に比べ安定した間歇的低酸素暴露を実現しているが、実験に用いる細胞系列はある程度安定したものに限定され、また細胞系列ごとに校正する必要がある。細胞系列ごとの実験条件を定めることは可能と考えており、睡眠時無呼吸との関連を指摘されているリポカリン型プロスタグランジンD2合成酵素(L-PGDS)の産生細胞やグレリン分泌細胞などを用いて、睡眠時無呼吸が関連病態に及ぼす影響について基礎的検討を加える。これらの結果を学会発表および論文執筆のかたちでまとめ、現行の実験系の妥当性を確立する。 並行して、iPS細胞を用いた実験に必要な指摘条件を決定し、分化能に対する持続的低酸素(SH)曝露および間欠的低酸素(IH)曝露の影響を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
1)各種細胞の培養および使用実験の費用 2)低酸素曝露装置のメンテナンス及び混合ガスボンベの購入 3)学会発表及び論文執筆にかかわる諸経費 4)上記以外の本研究にかかわるその他の消耗品
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