生体心においてL型カルシウムチャネルを介するCa2+流入増大モデルにβアドレナリン受容体刺激を加えるとカルシウム塩の沈着を伴うユニークな組織像をとる非アポトーシス性細胞死(以下von Kossa染色陽性細胞死)が観察される。このような細胞死像を呈する心臓において骨形成主要転写因子であるRunx2の発現上昇が認められる。本研究において、かかるvon Kossa染色陽性像を呈する細胞死が転写因子Runx2により制御されているという仮説を検証するべくCre-loxPシステムを用いた心筋特異的Runx2欠損マウスの作製を試みた。ターゲティングベクターを作成した後、ES細胞に遺伝子導入し陽性細胞をスクリーニングした後にキメラマウスを作製した。得られた9匹のキメラマウスと野生型マウスの交配により3ラインにおいて生殖細胞系伝達を確認しヘテロのRunx2 floxマウス(以下Runx2 f/+)のラインを確立した。次にRunx2 f/+マウス同士の交配によりホモのfloxマウスの作製を試みた。また胎生期に心筋特異的にCreを発現するbeta MHC Creとfloxマウスの交配によりbeta MHC Cre(+) Runx2 f/+を得た。beta MHC Cre(+) Runx2 f/+とRunx2 f/+にて得られたbeta MHC Cre(+) Runx2 f/fマウスは現在のところ生後2日以内に死亡している。これらの結果は、Runx2が胎生期の心臓の発生にいて関与している可能性を示唆している。現在かかる表現型の詳細な解析を施行するとともに、タモキシフェン誘導型Creを用いた解析のためのマウスを交配中である。
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