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2012 年度 実施状況報告書

活動する細胞の酸化還元状態を可視化する

研究課題

研究課題/領域番号 23659111
研究機関大阪大学

研究代表者

藤原 祐一郎  大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20532980)

キーワードイオンチャネル / レドックス
研究概要

(全体構想):本研究は、免疫系やストレス応答、脳神経機能において重要な働きを持つ酸化還元状態を可視化し、酸化還元シグナルが種々の臓器・細胞において果たす役割を解明します。
(具体的目的):細胞内の酸化還元の状態を測定するためのFRETベースの蛍光分子プローブを高解像度結晶構造が解けたイオンチャネルの細胞内コイルドコイルドメインを基にデザインします。開発した酸化還元蛍光分子プローブを活動する生きた細胞、具体的には貪
食細胞やミクログリアに発現させ、種々の活動ステージにおける酸化還元の状態や、病的に酸化ストレスにさらされた時の細胞内レドックス応答をリアルタイムに非侵襲的に測定します。
活動する細胞の酸化還元状態をリアルタイムに測定することを目的に、細胞への遺伝子導入する形で使用する酸化還元分子プローブを作成する。一対のCys残基を有するH+チャネル細胞内ドメイン2量体コイルドコイルを利用して、酸化還元に応答するプローブを作成することを試みた。本年度はそのため、細胞内領域の高解像度の結晶構造解析を行い、酸化還元2状態の結晶構造を高解像度で決定することに成功した。H+チャネルの細胞内領域は見事に酸化還元に応答して構造を変化させることを明らかにした。さらに、種々の酸化還元定数を有するバライティーに富んだプローブを作成することを試みて、種々の変異体コイルドコイルコンストラクトを作成し、大腸菌発現システムを用いてコイルドコイル蛋白を発現させ、FPLCクロマトグラフィーで高純度に精製し、熱安定性を指標にして酸化還元定数を測定した。これらのコイルドコイルの一方にドナーとなるCFP、もう片方にアクセプターとなるYFPをつなげたコンストラクトを作成し、キュベット内での酸化還元に対する応答を、FRETシグナルを測定することにより解析することを試みた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初の目的である細胞内の酸化還元の状態を測定するために、イオンチャネルの細胞内コイルドコイルドメインを利用することにした。その領域の結晶構造を解析することに成功し、新たにチャネルそのものが酸化還元に搬送して構造が変化するドメインを細胞内に有することを見いだした(現在投稿論文リバイス中)。それ以外に、イオンチャネルの温度依存的に会合・解離する細胞内コイルドコイルドメインがチャネル活性の温度域値を決定している事を見いだし、Nature communications誌に発表した。この成果は、新聞TV等で広く取り上げられ、研究成果が国民に広く普及した。また、2量体に最適化された会合構造を有することでチャネル機能が最適化されていることを明らかにし、Journal of Physiology誌へ発表した。をこのように、計画以上の進展があった。

今後の研究の推進方策

今後、生きた細胞へコイルドコイル蛋白を発現させ、酸化還元に応答した蛋白の変化をモニターする。
「貪食細胞における酸化還元状態のモニター」マウスから採取した好中球・マクロファージに蛍光分子プローブをトランスフェクションし発現させFRETシグナルの測定を行う。測定のゴールは貪食細胞の遊走・浸潤・貪食・ケモカインといった種々のステージでの酸化還元状況をリアルタイムにモニターすることである。
「ミクログリアにおける酸化還元状態のモニター」
酸化ストレスに応答した脳内ミクログリアの神経保護活動のメカニズムの一端を解明する目的で行う。作成した蛍光分子プローブをミクログリアに遺伝子導入し発現させ、顕微鏡下で休止期から活動期に変わるミクログリアの酸化還元状態をモニターする。H2O2による酸化ストレスを与えた時、あるいは脳虚血による酸欠状態の細胞内酸化還元状態の変化を観察する。

次年度の研究費の使用計画

当初計画では平成24年7月までにイオンチャネルの改変をし、平成25年3月までにチャネルの細胞への応用をおこない細胞の酸化還元状態を解析し、研究成果の取りまとめを行う予定であった。しかし、平成24年8月に、チャネルそのものが酸化還元に応答するという新知見を見いだした。細胞に応用し正確な酸化還元状態の解析のためチャネルそのものの解析を優先した(投稿中)。そのため、細胞に応用して解析する実験のやむを得ない遅延が生じ、期間延長が認められた。今後、細胞へ応用した解析を追加実験として進めていくための資金、及び、結果の取りまとめ、論文投稿出版費用が必要となる。使途内容は、「物品費」として400,000円、「人件費・謝金」として100,000円、その他雑費として100,000円とする。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 2件) 図書 (1件) 備考 (5件)

  • [雑誌論文] Gating of the Designed Trimeric/Tetrameric Voltage-Gated H+ Channel2013

    • 著者名/発表者名
      Fujiwara Y., Kurokawa T., Takeshita K., Nakagawa A., Larsson HP., Okamura Y.
    • 雑誌名

      Journal of Physiology

      巻: 591 ページ: 627-640

    • DOI

      10.1113/jphysiol.2012.243006

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The cytoplasmic coiled-coil mediates cooperative gating temperature sensitivity in the voltage-gated H+ channel Hv12012

    • 著者名/発表者名
      Fujiwara Y.,Kurokawa T., Takeshita K., Kobayashi M., Okochi Y., Nakagawa A., Okamura Y.
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 3 ページ: 816

    • DOI

      doi: 10.1038/ncomms1823

    • 査読あり
  • [学会発表] Regulatory roles of the dimeric structure in the voltage-gated H+ channel2013

    • 著者名/発表者名
      藤原祐一郎、黒川竜紀、竹下浩平、小林恵、中川 敦史、岡村康司
    • 学会等名
      第90回 日本生理学会大会
    • 発表場所
      東京、タワーホール船堀
    • 年月日
      20130327-20130327
  • [学会発表] 電位依存性H+チャネルの二量体化による活性制御とその構造基盤2012

    • 著者名/発表者名
      藤原祐一郎
    • 学会等名
      第3回 神経科学と構造生物学の融合研究
    • 発表場所
      大阪、大阪大学 蛋白質研究所
    • 年月日
      20121004-20121004
    • 招待講演
  • [学会発表] 電位依存性H+チャネルのゲーティングと構造基盤2012

    • 著者名/発表者名
      藤原祐一郎、黒川竜紀、岡村康司
    • 学会等名
      生理研研究会「膜機能分子の機能・構造ゆらぎの時空間スペク トル解析」
    • 発表場所
      愛知、生理学研究所
    • 年月日
      20120906-20120906
  • [学会発表] 電位依存性プロトンチャネルのゲーティングを制御する分子機構2012

    • 著者名/発表者名
      藤原祐一郎、黒川竜紀、竹下浩平、中川敦史、岡 村康司
    • 学会等名
      生理研研究所「温熱生理研究会」
    • 発表場所
      愛知、生理学研究所
    • 年月日
      20120904-20120904
    • 招待講演
  • [図書] 脳科学辞典(電子書籍) 分担執筆 「膜電位センサー」2012

    • 著者名/発表者名
      藤原祐一郎、岡村康司
    • 総ページ数
      -
    • 出版者
      理化学研究所
  • [備考] 電位依存性H+チャネル2量体会合領域の結晶構造とその機能的意義(日本生理学会HP)

    • URL

      http://physiology.jp/exec/page/page20120517165828/

  • [備考] 電位依存性H+チャネルの最適に設計された2量体構造と機能(日本生理学会HP)

    • URL

      http://physiology.jp/exec/page/stopics84/

  • [備考] 体温をあげて細菌から身を守る仕組みがわかった(SPring-8広報)

    • URL

      http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/research_highlights/no_67/

  • [備考] 水素イオンを通すタンパク質がペアで働く仕組みを原子レベルで解明! (大阪大学HP)

    • URL

      http://www.osaka-u.ac.jp/ja/news/ResearchRelease/2012/05/20120509_1

  • [備考] 水素イオンを通すタンパク質がペアで働く仕組みを原子レベルで解明!(SPring-8HP)

    • URL

      http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/press_release/2012/120509

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公開日: 2014-07-24  

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