研究課題/領域番号 |
23659113
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
小林 誠 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80225515)
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研究分担者 |
岸 博子 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40359899)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 病態生理 / 血管攣縮 |
研究概要 |
血管異常収縮である血管攣縮は、急性発症の致死的な難病、即ち、心筋梗塞や脳梗塞などの血管病を引き起こす。これらの血管攣縮による血管病は、突然発症する特徴を有しており、我が国の突然死の主因として恐れられている。 血管は、通常、Ca2+依存的に血管平滑筋が収縮・弛緩することによって、血圧や血流を一定に維持している。これに対して、血管攣縮は、正常なCa2+依存性の血管収縮が単純に増強したものではなく、Ca2+非依存性の異常収縮による事が分かっていたが、その原因分子は不明であった。申請者らは、Ca2+非依存性の異常収縮の原因分子スフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)を世界で初めて同定し、SPC の下流の病的経路を解明した。血管攣縮の理想的かつ根本的な治療法としては、SPC が産生され血管攣縮が起きた『後』に治療をする、という立場ではなく、SPC産生を直接遮断して、血管攣縮の発症そのものを阻止できれば真の予防が可能となるが、SPC の産生経路は全く不明である。従って、本研究では、SPC 産生の分子機構を解明することを目指す。 本年度の研究において、溶液中で、酸化ストレスによりスフィンゴミエリンが脱アシル化され、SPCが産生される事を発見した。さらに、本年度は、その反応の特異性を検討する目的で、種々の活性酸素の効果を検討した。その結果、活性酸素の中でもOHラジカルのみが、強力なSPC再生作用を有していることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は、酵素的反応でスフィンゴミエリンからSPCが産生されるであろうと予想していたが、本年度の研究により、溶液中で、酸化ストレスによりスフィンゴミエリンが脱アシル化され、SPCが産生される、という画期的な現象を発見することができた。さらに、本年度は、活性酸素の中でもOHラジカルのみが、強力なSPC再生作用を有する、という極めて高い特異性を有する化学反応であることも明らかにすることが出来た。これらは、過去に報告のない、全く新しいアプローチによる、新知見である。
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今後の研究の推進方策 |
まず、溶液中で認められた、酸化ストレスによるSPC産生機構の産生条件(例えば、各要素の濃度、溶液中のpHなど)を検討し、SPC産生を引き起こす最適条件を見出す。さらに、その反応が、細胞レベルで発生しうることを証明する。即ち、細胞レベルで、OHラジカルによってSPCが産生されることを証明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験内容に変更はなかったが、当初予定していた実験試薬の変更により、次年度へ995円の未使用額が生じた。なお、この未使用額は、次年度の実験試薬の購入にあてる予定である。なお、次年度の研究費は、初年度の溶液中でのSPC産生機構の実験のみならず、培養細胞を用いた実験を行うための、一般試薬、細胞培養試薬、培養細胞、およびSPC測定に必要な質量分析試薬の消耗品購入に使用する予定である。
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