本研究では、① 初期化因子(Oct3/4やSox2あるいはNanog遺伝子)の発現を選択薬剤とGFPでモニターすることが可能な新規ヒトレポーター細胞株を樹立する。②ゲノムワイドsiRNAライブラリーあるいはES細胞由来のcDNAライブラリーを分化したレポーター細胞株に導入し、選択薬剤存在下で生存可能な細胞からsiRNAおよびcDNAを解析することで、網羅的に初期化因子の発現を制御するネガティブおよびポジティブ制御因子を同定する。③同定した発現制御因子群の立体構造をホモロジー・モデリングにより予測し、④ドッキング・シミュレーションによるバーチャル・スクリーニングを行うことで、初期化因子の発現制御因子を活性化あるいは不活性化する低分子化合物の検索と同定を行う。さらに、今回確立した新規レポーター細胞システムを用いて、制御因子群の活性を修飾する可能性のある候補低分子化合物の生物活性を検証することを目的とする。 最新の遺伝子編集技術であるCRISPR/Cas9 systemを用いてNanog遺伝子のノックイン・ターゲッティング・コンストラクトをHEK293細胞に導入し、相同組み換えの効率を検討した。その結果、相同組み換えの効率は改善されたが、相同組み換えは両アレルで起こっており、レポーター細胞として使用可能な片方のアレルへの相同組み換えが起こった細胞株を得る確率が低い可能生が示唆された。そこで今後、CRISPR)/Cas9による相同組み換えで用いるgRNAおよびCas9 endonucleaseの発現量を変化させ、片方のアレルへの相同組み換え頻度が高くなる条件を検討してヒトiPSあるいはES細胞株でNanog遺伝子の発現モニター可能なレポーター細胞を樹立し、体細胞初期化因子の発現制御因子群を同定することで、初期化の分子機構を明らかにする。
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