研究課題/領域番号 |
23659118
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
岡田 泰伸 生理学研究所, -, 所長 (10025661)
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研究分担者 |
佐藤 かお理 生理学研究所, 細胞器官研究系, NIPSリサーチフェロー (60614196)
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キーワード | 低浸透圧センサー / バソプレシン / 視索上核 / アニオンチャネル / タウリン / グリシンレセプター |
研究概要 |
体液の浸透圧の調節に主役を果たす抗利尿ホルモンであるアルギニンバソプレッシン(AVP)を産成・放出するAVPニューロンは、視索上核と室房核に局在しており、脳下垂体後葉にまで軸索を伸ばし、その神経終末で体液浸透圧の変動に応じてAVPの分泌を行っている。低浸透圧条件下での神経終末AVP分泌抑制のメカニズムに関する最近の仮説は、下垂体後葉のアストロサイトが低浸透圧性膨張時に放出するタウリンがパラクリン的にAVPニューロン軸索終末付近のグリシンレセプター(GlyR)を活性化させて、膜を過分極することによって興奮性を抑制してAVP分泌を抑制するというものである。しかしながらこの説には種々の問題を含んでおり、未だ議論が多い。本研究では、この仮説に挑戦し、視索上核における低浸透圧センサーメカニズムを解明することを目的としている。23年度は、ラットSON領野のアストロサイトの初代培養系からのタウリン分泌を質量分析法を用いて定量した結果、低浸透圧条件下において有意に増大し、これは容積感受性外向整流性アニオンチャネル(VSOR)の特異的なブロッカーDCPIBにより有意に抑制されることを見出した。24年度には、AVPニューロンにパッチ・クランプ電流固定法を適用し、細胞外へのタウリンの投与が、過分極ではなく脱分極をもたらすこと、更にはこれによって自発的神経興奮を完全に消失させること、そしてこれらの反応はGlyRアンタゴニストであるストリキニンで完全に阻止されることを明らかにした。以上の結果より、低浸透圧センサーは視索上核アストロサイトのVSORであり、これを通って分泌されたタウリンは視索上核AVPニューロンのGlyRを刺激して(過分極ではなく)脱分極をもたらすが、その際のコンダクタンス増によるシャント効果で興奮性が抑制されることとなり、その結果、AVP分泌が抑制されることが結論された。
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