研究課題/領域番号 |
23659120
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 菜保子 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助手 (40457750)
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研究分担者 |
小澤 信義 独立行政法人国立病院機構(仙台医療センター臨床研究部), 産婦人科, 産婦人科部長 (30169289)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ストレス / がん |
研究概要 |
本研究はストレスのcommon mediator として重視されているCorticotropin-Releasing Hormone(CRH) のレセプターであるCorticotropin-Releasing Hormone Receptor 1(CRHR1)に着目し、子宮内膜癌細胞の発現はストレスおよび遺伝的背景に影響されるという仮説検証が目的である。 平成23年度は研究開始に伴う体制の再調整を行った。主となる研究協力施設を分担研究者の所属する仙台医療センターから新たに東北大学大学院医学系研究科婦人科学分野に変更した。当該分野では以前、本研究で着目するCRHの刺激により分泌されるエストロゲンの作用によるがんの発生・増殖を明らかにしている。 さらに、研究実績のある当該分野の研究者らと研究検討会を重ね、専門的示唆を基に部分的に研究計画を修正した。具体的には、前向き研究を開始する前に組織レベルでのCRH系とがんの関連を解明し、その上で患者の実際的ストレス等を評価し遺伝子情報を蓄積するというステップで研究を進める、とした。「CRH・エストロゲン・がん」の関連は他の内分泌関連のがんでも着目されている。ゆえに子宮内膜癌におけるストレスとがんの増殖等の関連を基礎的研究で明らかにすることは、がんとストレスの関連ならびにその機序を説明するための根拠のひとつとして重要である。 以上の検討をふまえ、現在は細胞組織の評価に関する実験を開始している。当該分野から、既に手術終了し悪性度が診断された子宮内膜癌検体パラフィン包埋ブロック数十例のほか、ポジコン・ネガコンとして使用するヒト正常胎盤組織、子宮内膜細胞組織の提供を受けた。免疫組織化学染色によってCRH系のがんの発現の関連を明らかにするためCRH、CRHR1、CRHR2抗体の発現について条件検討を進めている。条件検討は概ね良好な結果を得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は当初の計画段階より、日程的には若干遅れていると考えている。そのもっとも大きな理由として、分担研究者の変更の必要性が生じたことがある。これについては研究開始の比較的早い段階で、分担研究者の勤務場所の変更の可能性が明らかとなり、関係者らと、本研究の今後の実現可能性と研究内容の発展性、充実性を検討した結果、東北大学大学院医学系研究科婦人科学分野の協力を得ることとなった。あらたに東北大学大学院医学系研究科婦人科学分野に協力体制の依頼を行うに当たり、本研究の目的、意義、実現可能性等の説明のほか、調整に数か月の時間を要することとなった。最終的に、東北大学大学院医学系研究科婦人科学分野のほか、病理診断の専門家を含めた研究チームを新たに結成することが可能となり、専門的知見による新たな示唆を得ることができるようになった。結果的に、本年度だけ振り返ってみても、時間的なロスをカバーするに値する有意義な研究検討を行うことができたと考えられ、来年度以降はさらに内容の充実に期待ができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在得られている手術後標本による検討において、がん細胞ならびに他の細胞組織におけるCRH系の局在が明らかとなったならば、これらの結果と各標本の癌の進行ステージとの関連を統計的に解析する。そのほか、CRH系の局在分類と、婦人科学分野で既に同検体を用いて先行研究で明らかとなっているエストロゲンとの関連等についても評価を行い、ストレスとがん、内分泌系との関連を明らかにする。さらに病理標本の検体数も増やし有意性について分析を行い、前向き研究にシフトしてゆく方針である。前向き調査の準備に関しては、現在の実験と同時進行で検討してゆく。具体的には、実際に実施するストレスバイオマーカーの選択について等、当初の研究計画段階よりもストレス関連研究の分野において新しい知見が得られている可能性があり、これを加味して検討を行ってゆく。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、当初計画していた組織学的実験、質問紙調査を次年度以降に延期することによって生じたものであり、延期した組織学的実験と質問紙調査に必要な経費として平成24年度請求額と合わせて使用予定である。平成24年度は、組織学的実験、検討に必要なCRH系をはじめとした、内分泌に関連した組織診断用試薬の購入費のほか、実験に関連試薬ならびに物品の購入を必要とする。また、データ管理費、文書管理日、最新知見を得るための文献の入手費用、学会参加に関連した費用を必要とする。前向き調査に関しては、患者様を対象とした質問紙の準備のため、ライセンス費用、印刷費用、データ入力費用ほかを必要とすると計画している。
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