研究課題/領域番号 |
23659120
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 菜保子 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40457750)
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研究分担者 |
小澤 信義 独立行政法人国立病院機構(仙台医療センター臨床研究部), 産婦人科, 産婦人科部長 (30169289)
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キーワード | ストレス / がん |
研究概要 |
本研究はストレスのcommon mediator として重視されているCorticotropin-Releasing Hormone(CRH) のレセプターであるCRHR1に着目し、子宮内膜癌細胞においてCRHR1の発現はストレスおよび遺伝的背景に影響されるという仮説検証を目的とする。 平成24年度は分担研究者変更に伴い、研究協力施設を東北大学大学院医学系研究科に変更、さらに病理を専門とする研究者を研究チームに加え、新しい研究体制のもと研究を再スタートした。 上半期は新チームでの研究検討会を重ねた。本研究対象であるCRH系の癌に対する作用の解明は世界的にもまだ研究の蓄積段階であり、断片的な報告話されているものの臨床的アウトカムが明確でない。よって、まず臨床的アウトカムの解明が基本と考え、これを解明し報告することを最初の目標とした。具体的には昨年度条件検討を済ませていたCRH,CRHR1,CRHR2抗体を用い、過去標本組織における免疫染色によりがん細胞ならびに他の細胞組織におけるこれらの分子の局在を明らかにした。また、再発・生存等の診療情報を収集し、これらの分子の発現と子宮内膜癌の再発・生存予後の関連について統計的な解析を開始した。 現段階の解析の結果では子宮内膜癌は全般的に予後が良く、次のステップで前向き研究を行う際、もっと的確な疾患を検討候補に挙げる必要性も示唆された。よって子宮内膜癌に限定せず検討したところ、未だ予後不良であること、内分泌系の臓器であること、男女に発症することなどの理由から、挑戦的に子宮内膜癌と並行して膵癌も候補として同様の検討を開始した。 遺伝子との関連解析については、近年のゲノムを用いた研究手法は研究計画段階よりも飛躍している。当初計画した限定SNPの解析よりも、次世代シークエンサーを用いた網羅的関連解析を活用する方法も視野に入れ、検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は当初の全体計画よりは遅れているが、新しい研究チームで再スタートしてから研究自体は順調に進んでいる。 本年度は、専門的知見による新たな示唆を得て計画に調整を加えた。ストレス関連物質であるCRHとがんの関連の解明に向け、より現実的かつ効果的なステップを踏む計画となった。本年度は過去の子宮内膜癌病理組織を用いた再発・生存予後との関連の解析を行った。CRHの癌に対する作用・アウトカムとストレスに関する研究を多角的視点から実施してゆくために必要な協力体制も含めた実験・研究環境も充実してきている。 また、本研究と並行して行っている、CRHR1遺伝子多型とストレス関連性疾患の代表格の過敏性腸症候群との関連に関する研究を論文にまとめ公表した。本研究に必要な基礎をひとつ固めることができ、がんでの研究に結び付ける手がかりとすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
現在得られている子宮内膜癌および膵癌の手術後標本におけるCRHおよびそのレセプター群の発現と再発・生存予後について、統計解析による十分な検討を行う。具体的には、各標本の癌の進行ステージ等、関連すると考えられる因子である婦人科学分野で着目され、先行研究で明らかとなっているエストロゲン等の内分泌物質の発現との関連等についても評価を行い、ストレスとがん、および局所内分泌系物質の発現との関連を明らかにする。 検討で得られた結果をまとめ、論文や学会で公表する。 さらに次のステップで前向き研究にシフトするため、前向き調査開始に向け、疾患の選択も含む適格基準等の検討を行い、各方面との調整等、具体的な準備を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、初年度の研究の遅れによって生じたものであり、延期となっていた実験と前向き調査に必要な経費として平成25年度請求額と合わせて使用予定である。 平成25年度の研究費は、実験試薬類の追加購入費のほか、これまでに得られた結果を公表するに当たり論文作成、学会参加等でも使用する。また、データ管理費、文書管理費、最新知見を得るための文献の入手費用も必要とする。前向き調査に関しては、患者様を対象とした質問紙の準備のため、ライセンス費用、印刷費用、データ入力費用ほかを必要とすると計画している。
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