研究課題/領域番号 |
23659120
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 菜保子 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40457750)
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研究分担者 |
小澤 信義 独立行政法人国立病院機構(仙台医療センター臨床研究部), 産婦人科, 産婦人科部長 (30169289)
鈴木 貴 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10261629)
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キーワード | がん / ストレス / CRH |
研究概要 |
Corticotropin-Releasing Hormone(CRH)はストレスのcommon mediator として重視されている。本研究はCRHとそのレセプターに着目し、子宮内膜癌細胞における細胞増殖・予後への影響、およびストレス背景や遺伝的影響との関連についての検証を目的とする。 CRH系の癌に対する研究はわが国では非常に新規性が高い研究である。その作用機序は海外の先行研究で、子宮内膜癌、卵巣癌を中心に検証が進められているが、それが癌の悪性・増殖化に作用するのか、抑制的に作用するのかの方向性はin vivo, in vitroの検討だけでは明確な結果が得られておらず、まだ研究の蓄積段階である。これを踏まえ、平成25年度は分担研究者に病理を専門とする研究者を加えた新研究チームで検討し、臨床的アウトカムとの関連の解明によって、生体に対する作用としての大まかな方向性を最初に探ることをファーストステップとして研究を進めた。具体的にはCRH,CRHR1,CRHR2抗体により過去標本組織における免疫染色施行、がん細胞ならびに他の細胞組織におけるこれらの分子の局在を明らかにした。また、予後を含めた診療情報をもとに、CRH系の発現と子宮内膜癌の関連について統計解析を行った。その結果、CRHはCRHR1を介した作用が示唆され、CRHR1が腫瘍細胞の10%以上にpositiveであった場合、生存予後に負の影響をもたらすことが明らかとなり、この中間報告を第51回日本癌治療学会において示説で報告した。さらに詳しい結果は論文化し専門の雑誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では遺伝子との関連解析を計画したが、ゲノムを用いた研究の発展は近年目覚ましく飛躍しており、計画段階での手法が必ずしもベストではない状況となった。本研究は新規性が高い点も含めて再度検討したとき、ゲノムベースでの解析の際には、最新機器を用いると、CRH系との作用関連性のあるがんおよびそれ以外の細胞増殖関連因子も同時に網羅的に解析できるため、これらの因子も含めた検討を行うことがより適切であると判断した。よって、現在は人におけるアウトカムの方向性の確認を中心としたファーストステップに集中して研究に取り組んでいる。このうち、CRH系の組織発現と予後に関しては一定の結果を得られ、学会等で報告を行った。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の本質は、ストレスのcommon mediator であるCRH系は癌にどのように影響するかを明らかにすることである。研究の今後の発展性を検討したところ、子宮内膜癌は全般的に予後が良く、臨床データで生存アウトカムを検討するには対象疾患を再検討する必要性も示唆された。内分泌系の臓器であること、男女に発症する疾患であることから、子宮内膜癌と並行して膵癌も対象に検討する方針である。これによりCRHの作用には疾患特異的な作用もありうるのかも含めて検討できる。膵癌については前向き研究も視野に考え、一部調査も開始している。
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次年度の研究費の使用計画 |
2013年度末の時点で、子宮がん患者の過去症例87例におけるストレス関連ペプチドCRH,CRHR1,CRHR2が子宮内膜がん細胞に発現し、その発現により生存率および無病生存率に差が出ることを解明しこの論文を投稿した。この論文のアクセプトまでに時間を要しており、その必要経費が未使用額として発生した。 論文投稿・掲載料、英文校正料、実験経費(先の投稿の際のレビュアーによるコメントをもとに、追加実験が必要となった場合の試薬等の実験経費)として次年度分と合わせて使用予定である。
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