研究課題
Corticotropin-Releasing Hormone (CRH)は視床下部より分泌され、Hypothalamic-Pituitary-Adrenal axis: HPA軸とよばれる生体調節システムに中枢性に関与し、ストレス防御に不可欠な糖質コルチコイドの合成・分泌の制御を行なっている。CRHはストレスのcommon mediatorとして重視される一方、子宮内膜など、ヒトの臓器組織・腫瘍細胞にも存在が確認されており、腫瘍におけるその存在意義が注目されている。癌の発症には癌遺伝子変異や癌抑制遺伝子変異が考えられているが、ジェネティックな変化のみでは発癌機構を十分説明できていない。我々は、CRHに関連したストレス感受性の違いによる内分泌作用が癌細胞の増殖に影響を与える可能性があると仮説し、本段階では臓器癌組織内のCRH系の発現と予後の関連を検証することを目的とした。(1)子宮内膜癌で腫瘍摘出手術した患者87名の過去症例について、癌細胞内のCRH,CRHR1,CRHR2の発現量によって無再発生存率および全生存率に差があるか統計学的に検討を行った。癌細胞において10%以上、細胞質内のCRH,CRHR1,CRHR2発現があった場合を陽性とみなすと、CRHは87人中23人(26%)、CRHR1は13人(15%)、CRHR2は9人(10%)が陽性であった。CRHR1陰性群と比較しCRHR1陽性群は、無再発生存期間(p=0.023)、全生存期間(p=0.009)ともに不良であった。単多変量解析の結果から、CRHR1は子宮内膜癌において独立した予後因子である可能性が明らかとなった。(2)ストレス感受性とCRHの関連は、対象者を当初予定の子宮内膜癌患者から、より予後の厳しい疾患でありかつ性差についても比較検討の可能な膵癌患者に変更し、前向き調査による検討を開始した。
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Int. J. Gynecol. Cancer
巻: 24 ページ: 1549-57
10.1097/IGC.0000000000000269
http://www.oncolnurs.med.tohoku.ac.jp/achievements.html